アベノミクス3本の矢の1本目・金融政策とは、円高・デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を目標として資金の供給量を劇的に拡大する「異次元の金融政策」を断行し、為替を円安に誘導し、輸出企業の業績改善を狙うものだった(第58回)。

 第二の矢・公共事業は、公共事業の大幅な増額による巨額な財政出動であった(第51回)。2013年度には、予算規模は過去最大規模の100兆円を超え、国債発行額は、民主党政権時に財政ルールとして定められていた44兆円を大きく上回る49.5兆円に達した。

 2014年度予算編成では、各省庁が概算要求で軒並み前年度より大幅増の要求を行った。一般会計の総額は、過去最大の95兆8823億円に達した。歳出で最も大きい社会保障費は4.8%増の30.5兆円と、初めて30兆円を突破した(第73回)。2016年7月の参院選に向けては「一億総活躍社会」を打ち出したが、「一億総活躍」の予算を狙った族議員やさまざまな業界が予算獲得を目指して跋扈する状況となった(第117回)。

 安倍首相は消費増税に関しては、2013年10月に、当初の予定通り消費税率を現行5%から、2014年4月に8%に引き上げると決断したが、前述の通り10%への増税は延期した。また、「法人税の実効税率引き下げ」も決定した(第68回・3p)。公明党の意向も受けて、社会保障のための税収増を事実上先送りすることになる「軽減税率」も決定した(第121回)。

 要するに、安倍首相は「財政健全化の国際公約」(第68回)よりも、景気腰折れを防ぐための対策と選挙対策としての財政出動・金融緩和を優先させてきたといえる。結果として、財政健全化の達成は遠のいてしまっているのが現実だ。安倍政権は参院選で、財政再建を真剣に考える国民の選択肢にはなり得ない。

「増税延期」で共産党と共闘すれば、
民進党はサイレントマジョリティの支持を失う

 一方、岡田代表が「増税延期」を表明したことで、野党側も財政再建を真剣に考える国民の選択肢ではなくなった。もちろん、野党側にも「三党合意」に関わった政治家は多数いる。だが、野田前首相などは政権から転落した「戦犯扱い」されて、野党側の意思決定の中枢から外されている。

 民進党内部で「リベラル系」の影響力が強くなっている。安保法制を巡る攻防で、野党側の保守系議員が安倍首相に対する態度を硬化させてしまった(第111回)。それ以来、野党側は安倍政権との対立軸の明確化を図るようになり、リベラル派が主導権を握る流れとなった。その流れに乗って近づいてきたのが、「国民連合政権構想」を提唱する共産党だ。