チャート化する際にありがちなのが、データをグラフにするだけでは分析しているような気がしないので、分析手法を学ぼうという勘違いです。そうすればより賢い発見をして、それがよい問題解決につながると思うのかもしれません。でも、そうしたやり方はアマチュアの方にはおすすめできません。マッキンゼーの人材育成責任者として実践し、BBT大学の講座で人気の著者が、普通のビジネスパーソン向けに書いた『はじめての問題解決力トレーニング』から、エッセンスをご紹介します。

難しい分析手法は必要ない

 チャート化する際にありがちなのが、データをグラフにするだけでは分析しているような気がしないので、分析手法を学ぼうという勘違いです。そうすればより賢い発見をして、それがよい問題解決につながると思うのかもしれません。でも、そうしたやり方はアマチュアの方にはおすすめできません。

  本屋さんに出かけると、マクロ経済分析とか経営・財務分析、定量分析やビッグデータ分析など、分析について解説した本がたくさん並んでいます。自分の会社やビジネスの問題を理解するためにはそうした高度な分析手法を駆使しなくてはならない気がして、1冊手に取って試してみる。でも結局、よくわからずに途中で放り投げてしまう。もしかしたら、いまこの本を読んでくれている方の中にも、そんな方がいるかもしれません。

 安心してください。自分の会社や仕事を何とかよくしたいと考えるみなさんが、問題解決や情報分析の専門家であるコンサルタントやアナリストのための「分析手法」を学ぶ必要は、まったくありません。

 高度な分析手法を学ぶのはけっして悪いことではありません。でもそれは、分析することを生業にしている人に役立つものであって、普通に自分の会社や仕事を何とかしたいと考えている人には、ハードルが高すぎて、結果的に問題発見を遠ざけることになりかねません。

 アマチュアであるみなさんが問題の“あたりづけ”をするためには、もっと簡単な理解で事足ります。難しい分析手法から入るのではなく、まずは自分ができること、自分にとってなじみのあることからスタートするのです。

 数字の理解は、推移か、量か、割合か、せいぜい2つか3つの数字の関係を捉えるくらいで十分です。チャートといっても、単純な折れ線グラフや棒グラフ、割合を示す積み上げ棒グラフ、せいぜいがんばって散布図を使えば、それでしっかりと理解は進みます。

 背伸びする必要はまったくないのです。

チャートから
考えるきっかけをつかむ

 図表5は2010年から2016年まで、毎月の体重の平均値をエクセルに入力し、それをチャート化したものでした。このように過去と比較することは基本中の基本で、1つの数字だけでは意味が読み取れないことも、時系列で数字を並べて毎月の動きを追ってみると、変化に気づけることが理解していただけたはずです。

 さて、体重がどのように変化してきたか、そこから何が読み取れるかがわかったわけですが、これで満足してはいけません。重要なのは、チャートを見ながら“なぜか?”という疑問を持つことなのです。

 たとえば、次のようなことが知りたくなるはずです。

(1)54歳から56歳にかけて徐々に体重が増えているのはなぜか?
(2)81kgを超えた時点で大幅減量に取り組んだのはなぜか?人間ドックの数値が悪くて医者から注意されたのか?あるいは階段を上るのが大変だと感じ始めたのか?
(3)半年ぐらいかけて10%強の減量に成功しているけれど、どのような手段で行ったのか?運動と食事療法なのか?
(4)冬場になると運動量が減るせいか、体重が増えている。クリスマスやお正月の影響も考えられるけれど、月別の特徴は何かあるのか?
(5)せっかく減量して最初の半年強は1、2kg増で維持していたのに、その後コンスタントに体重を増やしている。いったい何が原因なのか?
(6)現在の状況は、大幅減量を達成した時と比べてどれほど悪化したといえるのか?

 これらの疑問は、時系列に見ていくことで湧いたものですが、より根本的な疑問を持つことも大事です。

(7)顕太さんの体重が増えてきているのは確かだが、本当に太っているといえるのか?

 この場合、誰と比較するとよいのでしょう。もちろん奥さんと比較してもあまり意味がありません。男性の平均だと若い人が入ってくるので、やはり同年代の人と比較することが大事になりそうです。