企業に求められる
ミスマッチ解消努力

 大学がこれから実施するキャリア教育は、さまざまなレベルのプログラムがあるでしょう。産業界の基礎知識をひとつ深堀りして、働くリアルを伝えることで表層的なイメージを修正させるようなプログラムも出てくるはずです。

 ミスマッチを減らすため、学生が自分に合った企業選択をするために、大学と企業の間にある断絶を埋め、連続性を持たせる試みが必要なのだと思います。

 もっと言うなら、将来のビジョンを描きつつ進路選択をするために、中学・高校の段階で産業を含めた「世の中」を教える教育が必要なのだと思いますが、一部の例外を除けば、そのような視点に立ったプログラムが普及する機運はありません。

 そもそも、大学3年生の秋になって初めて世の中のことを考えるような現状自体、かなりおかしなことであると思います。

 入社3年以内に3割強が辞める早期離職は、企業にとっては採用・教育費がムダになってしまう大きなロスです。売り上げの急増が望めず、コスト低減による利益確保を強いられる現状では、早期離職をなくすためにミスマッチを解消する努力が企業に求められます。

 楽しく明るい企業イメージを発信するだけでなく、そこで働くことの喜怒哀楽を感じさせるような情報提供をすること。それが企業に問われています。

 もうひとつ付け加えると、現状でも各大学はOBや人事担当者を呼んで「企業研究」「業界研究」のレクチャーや講演を熱心に行っています。それはそれで意味のないことではありませんが、業種だけでなく職種についても関心をもって学生に情報伝達してほしいと強く思います。

 前に挙げた学生の質問にあるように、その企業にとってきわめて重要な営業という職種が、歪んだイメージでしか学生に認識されていないことは、ミスマッチの大きな要因になっていると思われます。会社に入ると、業種を問わず、その多くがエントリー・ワークとして営業を経験することになるのですから。

 このように考えると、職場で人が育たないという以前に、会社選びの段階でも育つ若手を確保するために、やるべきことがあると思うのです。

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