トランプorクルーズ
弱体化した共和党が迫られる究極の選択

 このように共和党の伝統とは懸け離れた過激な選挙戦を展開するトランプ氏に、大統領候補の座を奪われようとしているのだから同党主流派の警戒感は強い。

 だが、共和党にはトランプ氏に付け込まれても仕方がない弱点がある。党内の分裂だ。同党は反リベラル、つまり民主党への対抗意識で成り立ってきたが、「党のイデオロギーは民主党ほど統一されていないのが実態」(岡山裕・慶應義塾大学教授)だ。例えば、人工妊娠中絶の禁止を求める保守主義と、経済的な観点から規制撤廃を追求する新自由主義を一つの枠組みに押し込めるのは無理がある。

 それに加えて近年は、政府機能の極小化を目指すティーパーティーなどの強硬派と、高齢者向けの公的医療保険や年金の必要性を認めて、オバマ政権とも時に妥協する主流派との対立が激化していた。

 主流派は当初、トランプ氏がつまずいた後、妥当な候補に一本化するシナリオを描いていた。しかし、主流派の大本命だったジェブ・ブッシュ氏が鳴かず飛ばずのまま予備選から撤退。さらに、州知事らから最多の推薦を受けていた期待のホープ、ルビオ氏も地元フロリダ州でトランプ氏に敗れ、撤退した(下図参照)。事ここに至るまで本命候補を一本化できなかったところに、主流派の求心力低下が如実に表れている。

 トランプ氏は、共和党の分裂状態と主流派の求心力低下に乗じて、共和党を乗っ取ったのである。