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こうなると主流派は、もはやテッド・クルーズ氏に望みを託すしかない。3月23日、撤退したブッシュ氏はクルーズ氏支持を表明した。いったいクルーズ氏とはどのような人物なのか。その実像に迫るため、3月3日、同氏の支持者が集まる1万人規模の保守派イベント、CPACに潜入した。
集会は厳かに幕を開けた。参加者らは国家への忠誠心を示す宣誓を斉唱。キリスト教の祈りが始まり、「アーメン」と声をそろえて締めくくると、なんとステージ上の女性が感極まって泣き始めた。政教分離の原則が染み付いている記者から見れば異様な光景だった。
CPACでは共和党予備選挙の立候補者が演説するが、会場を最も沸かせたのはやはりクルーズ氏。参加者は白人、キリスト教右派が多く、増税や銃規制反対が信条だ。進化論さえ否定するキリスト教原理主義者のクルーズ氏は筋金入りの保守であり、多くの参加者のヒーローなのだ。
だが、共和党のヒーローにはなれないかもしれない。何しろクルーズ氏は、国民の共和党不信と党の分裂を招いた張本人と見なされているからだ。2013年には、オバマケアを変更しなければ予算案を認めないと強硬に主張。与野党の折り合いがつかず、政府機関の一部閉鎖を引き起こして国民生活を混乱に陥れた。これが今回の選挙の「反エスタブリッシュ」のムーブメントにつながっている。
トランプ氏かクルーズ氏か。進むも地獄、退くも地獄。追い詰められた共和党に他の選択肢はないのか。「追い詰められた共和党」で、同党が握る「最後のカード」を紹介する。