もっとも、単なる名義貸しではない。販売時には、トランプ氏の長女イヴァンカ氏率いるチームがタワーを訪れ、「内装のプラスチック製の部材を木材や大理石に替えなさい」と指示したり、パンフレットの装丁や構成にも助言をした。「トランプブランドを維持するため、大変な配慮をしていると感じたよ。ライセンス料は、1セントに至るまで支払った価値があったね」と、レベンソン氏は大満足だ。
美しく聡明で、宝石ブランドを手掛け、2児の母でもあるイヴァンカ氏は、米国内で人気が高い。その才能は、アクの強い父親の下でも十分に発揮されている。
なお、トランプ氏のビジネスの概要は表に示したが、これら不動産のどの程度をトランプ氏の会社が直接所有しているのかは、レベンソン氏もよく知らないという。
ところで、実は日本人でも、ハワイ州でトランプブランドのコンドミニアムを手にした人物がいることをご存じだろうか。著名人では、幻冬舎社長の見城徹氏と、放送作家の小山薫堂氏だ。
2人は、ワイキキにある地上38階建ての「トランプインターナショナルホテル&タワー」の部屋を所有。日本での販売代理店であるセブンシグネチャーズインターナショナルのホームページでは、同社社長と鼎談し、サービスや眺望の良さを褒めちぎっている。見城氏に至っては、自身が出演した民放のテレビ番組でもこの物件を紹介するほど、すっかりお気に召したようだ。
セブン社によると、06年に日米同時発売し、日本からは、開業医や企業オーナーといった富裕層を中心に、最高額10億円で購入され、1日で完売。ほとんどが現金購入だったという。現在でも、海を望む上層階は、広い部屋で約350万ドル(約3億8500万円)と高値が付いている。
この物件もまた、トランプ氏が自ら開発したのではなく、米国の不動産会社が建設し、トランプの名義利用とホテルの運営マネジメント費として、一定の金額をオーナーが支払う仕組みだという。
日本にはトランプ物件が存在しないため分かりづらいが、米国では、ホテルならリッツ・カールトンと同等のブランド力があるという。自分自身だけでなく、ブランドのプロデュースにも成功、名前でもって荒稼ぎするまでになったトランプ氏。選挙戦での暴言、迷言の数々は果たして、物件のオーナーである富裕層の心理に、どのように響くのだろうか。