「不動産王」とはトランプ氏の枕ことばだが、ビジネスの実態は謎だ。本誌は現地取材により、そのカラクリの一端を解明。実は日本の富も、トランプ氏に吸い上げられている。
父の事業を引き継いだとはいえ、世界各国に自らの名を冠した超高層ビルや高級ホテル、コンドミニアムを建設し、「トランプ王国」を築き上げたのは、ドナルド・トランプ氏の剛腕によるところが大きい。
だが、トランプグループの中核企業であるトランプ・オーガナイゼーションのホームページには、いわゆる「IR情報」のページはなく、非上場とみられる。売上高や資産規模もこれまで報じられたことはない。45億ドルといわれる個人の総資産額は、米「フォーブス」誌の調査結果だ。グループの実態は今なお定かでない。
しかし本誌は、今回の現地取材の中で、トランプグループの収益のカラクリの一端を特定した。トランプ氏を直接知るビジネスパートナーの貴重な証言を得ることができたのだ。その詳細をご覧に入れよう。
米国南東部、大西洋を望むフロリダ州の東岸。有名なパームビーチをはじめ、数々の白砂の海岸沿いにリゾートホテルが立ち並ぶ。ニューヨークなどで成功を収めた「勝ち組」ビジネスマンや事業家が別荘やコンドミニアムを所有し、休暇や老後を過ごすことが多い。
そんなビーチの一つ、ハリウッドビーチ沿いに、地上41階建て、ガラス張りの高層コンドミニアムタワー「トランプハリウッド」がそびえ立つ。
このタワーを2010年に取得したのは、地元で不動産業を展開するBH3社長のダニエル・レベンソン氏(44歳)だ。
リスクなく数十億円
才媛の長女が活躍しブランド維持に執念
そもそもは他の不動産開発会社が建設したものだったが、リーマンショックで手放したところを、BH3が1億6000万ドル(約176億円)で、銀行への債務付きで取得した。
なぜトランプグループが開発したものではない物件に「トランプ」の名が付いているのか。それは前の所有者がトランプグループにカネを払って、名義を利用する契約を結んでいたからだ。
レベンソン氏もその契約を引き継ぎ、トランプ氏側にカネを払うことにした。実はレベンソン氏、「トランプ氏は、若いころからの憧れの人物だったんだ」と打ち明ける。
約20年前、弁護士資格を持つレベンソン氏は、ニューヨーク州最高裁判所で研修生をしていた。そこに、不動産関連の訴訟を抱えたトランプ氏が頻繁に訪れていた。当時から不動産業に関心があったレベンソン氏は、トランプ氏が裁判所にやって来るたび、リムジンに駆け寄って「私を雇ってください」と直談判していた。