各国のファーストレディーの近くに
「ホームレスベッド」が

大西連(おおにし・れん)氏。1987年東京生まれ。炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から、生活困窮者の相談支援に携わるように。生活保護や社会保障削減に関し、現場からの発信・政策提言を続けている。2014年7月より、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。著書は『すぐそばにある「貧困」』(ポプラ社)など。「もやい」の活動スペース「こもれび荘」にて

 大西さんは、「G7伊勢志摩サミット」に先立って開催された「市民の伊勢志摩サミット」(2016年5月23日・24日)に参加し、「持続可能な開発目標(SDGs)」分科会でスピーカーを務めた後、引き続き、伊勢志摩サミット期間中、各国からの記者のために開設された国際メディアセンター・NGOワーキングスペースにおいて、展示・企画などを行った。それらに入場するには、外務省の発行した通行証が必要だ。つまり大西さんは、日本のNGO・NPOを代表して伊勢志摩サミットに参加した一人なのである。大規模国際イベントでは、多くの場合、NGO・NPOの参加を歓迎する。

「でも、国際メディアセンターとNGOワーキングスペースは、首脳たちが会談する場所から20kmくらい離れてたんです」(大西さん)

 そこには、誰がいたのだろうか?

「各国関係者、三重県や地元自治体の方も見えていましたが、主に各国のメディアの方々です。メディアの方々だけで5000人くらいでした。首脳会談が行われている場所に入れるのは、本当に一部の人だけです」(大西さん)

 もしや、「NGOやNPOにも参加の機会を与えました」という日本政府のポーズ?

「もちろん、不十分な点はありました。同じ敷地内にあっても国際メディアセンターとNGOワーキングスペースは建物が違っていたり、連絡が悪かったりなど。とはいえ、NGOの企画や記者会見に来てくれるメディアがいたり、記事として配信されたものもありました」(大西さん)

G7伊勢志摩サミット・NGOセンター(国際メディアセンターに隣接)で展示された「ベッド」。日本国内だけで1万人以上のホームレス状態の人々が実際に眠る路上の環境を再現したもの。ネズミは本物(剥製)ということ(提供:認定NPO 自立生活サポートセンター もやい)。トレーラー動画メイキング動画もあり
拡大画像表示

 NGO・NPOの企画の一環として、「もやい」は「ホームレスベッド」一台を展示した。といっても、本物のベッドではなく、路上生活者たちが寝ている環境を「ベッド」風にしたアート作品だ。ちょうど、伊勢志摩サミット期間を含む2016年5月21日~29日、千葉県印西市の「メガマックス千葉NT店」で、4点の「ベッド」が展示された。「厳選されたセメントを使用したコンクリートは、高い硬度と反発力で体を力強く支えます」といった解説がされているベッドの数々にご関心がある方は、ぜひ「ホームレスベッドコレクション2016」サイトもご参照いただきたい。

「もやい」が伊勢志摩サミットに参加することは、早い時期から決定していた。「ホームレスベッド」の展示も?

「いえ、たまたま千葉での展示と同じ時期でベッドが完成していたこともあり、『誰一人として置き去りにしない』というSDGsのテーマに、ぴったりだと思ったので」(大西さん)

 外務省、さらに会場を警備する警察の許可を取るため、調整に調整を重ねるという苦労はあったものの、ホームレスベッドは、無事、展示された。各国首脳の反応は?

「直接、来て見ていただくことはできませんでした。オバマさんに寝てみてほしかったんですけどね(笑)。ファーストレディーの方々は、NGOワーキングスペースの近くまで来てくださいました。安倍昭恵さんが、カナダ首相夫人・イタリア首相夫人と一緒に来て、すぐ近くでおこなわれていたオリンピック・パラリンピックの啓発イベントにも参加していました。残念ながらNGOのワーキングスペースには立ち寄ってもらえず。SPが周囲にたくさんいたので、近づいて説明することはできませんでした。一方で、各国のメディア関係者、省庁や関係者のみなさまには大変好評でした。ともすれば大きな話になりがちな国際会議の雰囲気の中で『現場感』を出せたのではないか、と」(大西さん)

 その成果は、「G7伊勢志摩首脳宣言(骨子原文仮訳)」に盛り込まれただろうか? 残念ながら、否である。