食事を充分に摂れない欠食状態の子どもの問題は、少しずつ認知されるようになっている。しかし背景や影響の深刻さについては、今後さらに知られる必要があるだろう。

今回は大阪「CPAOサマーくらぶ」の試みを紹介し、給食のない夏休みの子どもたちの「食」を通じて、子どもの貧困とその解決について考える。

給食のない夏休みに
痩せてしまう欠食の子どもたち

子どもたちの遊びの輪の中にいる、CPAO代表・徳丸ゆき子さん。疲れをにじませがらも、楽しそうだ
Photo by Yoshiko Miwa

 夏休みも終盤の2015年8月30日午後。大阪子どもの貧困アクショングループ(CPAO〈シーパオ〉)の事務所が置かれている借家の一室である6畳の和室で、幼児から小学校高学年までの数人の子どもたちが、代表・徳丸ゆき子さんと楽しそうに遊んでいた。

 この日の遊びのメニューは、「しんぶん遊び10連発」。この日は雨が降っており、外遊びができなかったので、屋内で身体を動かせる遊びとして徳丸さんが考えたものだ。

 子どもたちはまず、古新聞の束を手でちぎって細かくし、和室に分厚く敷き詰めたとのこと。新聞紙の海で「泳ぎ」を満喫した後、小さな袋入りの菓子多数を埋めて「宝探し」。ついで新聞紙を大きなビニール袋に詰め、大きく重たいボールができる……。

 私が訪れたときは、「ボウリング大会」が佳境だった。空のペットボトル5本をボウリングのピンに見立て、新聞紙のボールを投げたり滑らせたりして倒す。「4本いっぺんに倒れた!」「5本全部!」と子どもたちの歓声が上がる。徳丸さんの顔には、隠しようもない疲労の色が滲んでいるけれども、「もう、ヘロヘロです」と苦笑しながらも、膝にむしゃぶりついてくる3歳ほどの女の子の肩を愛おしそうに撫でている。

2015年夏「CPAOサマーくらぶ」の予定表。キャンプにお泊り、さまざまな「部活動」に「しゅくだい」。すべてのプログラムに対して子どもの参加費は無料
拡大画像表示

 2015年の夏休み、CPAOは週3回の活動を中心とする「CPAOサマーくらぶ」を開催した。毎日、14時から16時まで、「カメラ部」「スイーツ部」「しゅくだい部」などの活動を行う。子どもたちは写真を撮ったり、スイーツを作ったり、もちろん学校の宿題をしたりもする。そこには、指導できる大人も参加している。「カメラ部」の指導をしているのは、プロのドキュメンタリー映画監督だ。でも、集まって共に過ごすことが中心となっているように見える。

 16時に活動が終了すると、「ごはん会」が始まる。参加している子どもたちも含めて全員で、何を食べたいかを決めて、料理して、食べ、20時に解散する。

 さらに、山奥の古民家で8泊9日のキャンプも行った。予定表には、秘密基地づくりにスイカ割りと、わくわくする活動メニューが並んでいる。事務所で一泊の「お泊まり」もした。翌朝は、みんなで朝ごはんを作って食べた後、子どもたちを中心に全員で、居場所の掃除や草むしりなど、地域のボランティアに参加した。中高生とシングルマザーが好意で寄せられた浴衣を自分で選び、着方を教えてもらい、浴衣姿でお祭りにも行った。

 ……こんな活動が自分の地域にあったら、「楽しそうだから」という理由で参加したくなる大人も、たくさんいそうだ。徳丸さんたちは、なぜ「サマーくらぶ」を発想し、どのように企画したのだろうか?

「夏休みの子どもたちの食を支えるため、なんです。いつも、ごはんがままならない子どもたちが、たくさんいますから。夏休み中、学校の給食はありません。だから今年は、『CPAOサマーくらぶ』をやろう、とスタッフで考えました」(徳丸さん)