また、岡田先生は、ネットや携帯もコミュニケーションの1つだが、いま不足しているのは「身体化されたコミュニケーション」だと指摘する。

「パソコン上のバーチャルなコミュニケーションではなくて、実際に顔を見て、たまにはケンカしたり、笑い合ったりする機会が、デバイスの氾濫によって不足している。こうした中間的な物語と身体的なコミュニケーションの必要性を社会にどう見出していくかが、大きな意味の処方箋になるのかな、と思うんですね」

「病気と認められたい」患者に
“病名”をつけざるを得ない葛藤

 さて、厚労省の新しいガイドラインの考え方によれば、引きこもりの相談に来た人たちの95%(報告書では80%)に、何らかの精神疾患があるという診断名が付いた。そんな引きこもりと疾患との関連性について感想を聞くと、臨床医の立場に徹している岡田先生も、単なる印象だと前置きしながらも「彼らに病名をつけようと思えばいくらでもつけられてしまう。例えば適応障害とか社会不安障害とか逃避型回避型人格障害とか」と指摘する。

「外来者を調査したということは、すでに自覚を持った人たちや病気と認めてほしい人たちを診察するわけです。一方で、診断名を付けなければ、睡眠導入剤すら出せない。引きこもりの定義も、いろいろな人がいろいろなこといっていて、統一のものがまだない。(厚労省の疾患との関連性のデータは)実際の引きこもりをランダムに抽出した結果ではないと思うんです」

 確かに、相談に行くということは、本人たちも自分の正確な心身の状態を客観的に知りたいと思っていたに違いない。

「引きこもり」をしているということは、家族や周囲から「なんで、おまえは引きこもってんだ?」と批判されたり、あるいは、そういう視線にさらされたりしているだろうことは、容易に想像がつく。そうなると、「引きこもり」をするにしても、周囲が納得して自分も安心できるよう、何らかの理由が欲しくなる。