お客様がアンカンファタブルに感じても
納得してもらえる提案とは?

留目 いまレノボが取り組んでいるのは、コンピューティングパワーを水や空気のごとく自然のものとして社会に提供していく仕事です。そこにわれわれのミッションがあり、事業の本質があります。ただ、これからの時代、従来のようなハードウェアをメインにしたビジネス展開だけでは、そのミッションを実現できないのは明らかです。今後は社外の多様な組織とよりオープンでフラットなパートナーシップを築き、その中で大きなプロジェクトを動かして、世の中にコンピューティングパワーを提供できるような仕組みづくりをしなければなりません。それに向けて、社外との関係づくりがキーになるし、社内の体制も徐々に変えていくつもりです。

平野 われわれのようなITを仕事にしている人間にとって、「デジタル・トランスフォーメーション(デジタル革新)」という言葉は、これからますます大きなテーマになります。いくつか例を挙げると、たとえばお客様同士がより緊密な関係性を構築するためのデジタル・トランスフォーメーションもあるし、お客様が新しい製品やサービスをより効果的に市場に出していくためのデジタル・トランスフォーメーションもある。日々の業務のオペレーションを改善するためにも、デジタル・トランスフォーメーションは効果を発揮します。デバイスやクラウド環境が格段に進化して、それぞれの接続性が高まっている現状において、オーガナイズされたデジタル・トランスフォーメーションの価値をどのようにお客様にご理解をいただき、実際に使ってもらって成果を出していただくか。それはわれわれITベンダーが責任をもって取り組むべき仕事です。

留目 なるほど。ただ、日本はデジタル・トランスフォーメーションに関しては、世界的に見ても少し遅れていますよね?

平野 そうですね。ただ、そこは我々が工夫すべきポイントとも言えます。お客様への提案の仕方も、従来の「このソフトウェアが便利ですよ」という製品単体の話から、「御社のデジタル・トランスフォーメーションを強化するには、このデバイスとクラウドをこうやって組み合わせて……」という対話の仕方に変わっていくべきです。
 お客様が抱えている課題の内容をうわべだけ聞いているだけだと、「ソリューション」とは名ばかりの製品の組み合わせ提案で終わってしまうんですよね。先ほどの本質を見極めるという話にも通じるのですが、お客様にとって初めはアンカンファタブル、つまり心地悪く感じるかもしれないけれども、よくよく考えれば「これは理にかなっている」と納得してもらえる提案をしなければならないとも思っています。 (後編に続く)