近年になって低山での遭難はますます増えてゆく傾向になっている全国の山で1年間に約3000件の遭難事故が起こり、3300人以上が死亡または救助されています。1日平均にして8.1件という大変な多発状況です(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ひと昔前、登山は危険なことの代名詞でした。それにくらべ、ゆったりと精神的な余裕をもって楽しめるのが「低山」登山ではないでしょうか。しかし「かんたんに、気軽に始められる」と出かけてみると、思いがけず事故に巻き込まれることもありえます。野村仁さんの著書『ブームの落とし穴 「低山」登山のやってはいけない』(青春出版社)から、低山登山を楽しむ際、気を付けなければならない「軽い遭難」についてお伝えします。

低山であっても“遭難”は発生している

 この記事では遭難の話をします。

 遭難のことを知らなくても、低山登山をすることはできます。しかし、低山が楽しくなって2回、3回と出かけるようになった人には、ぜひ次に書いてあることも知ってほしいと思っています。

 自然の中を自分の体一つで旅する登山・ハイキングは、スピリチュアルな行為であると同時に、心身の健康を維持する点からも、大変優れた遊びと言えます。

 しかし、最大の問題点があります。遭難事故が多いことです。

 登山人口が増加したことの裏返しでもありますが、現在、山の遭難は史上最も多い状況が続いています。全国で1年間に約3000件の遭難事故が発生し、3300人以上が遭難しています。意外なことですが、その中には低山で遭難するものも多数含まれているのです。近年になって低山での遭難はますます増えてゆく傾向になっています。

 低山登山やハイキングの本では、遭難という重いテーマには触れないか、あまり深入りしないのが普通です。これから始めようという人に二の足を踏ませるテーマですから。