料理は食べるもの。撮るものにあらず

 わたしがオムライスを食べていたら、隣にいた常連と思しき親子連れが三色ライスを注文した。母親と小学生の女の子である。親子連れはあっという間にそれぞれの皿を平らげると、「ごちそうさま」と言って帰っていった。

 秋山が笑いながら、後ろ姿に声をかけた。

「どう? 大丈夫だった?」

 子どもにおいしい? と聞く店主はいる。しかし、大丈夫だった? という文句は初めて聞いた。

「量は多かったかな? 残さず食べてお腹がいっぱいになったんじゃないの? 大丈夫?」という意味だと思われる。

 前述のように秋山はいまも下町を歩いては撮影をしているが、これまでただの一度も写したことのない被写体がある。それは……。

「料理の写真は撮ったことがない。こうして、取材に来てくれた人が写してくれるから、僕は撮らないんだ。それに、自分の料理を撮るのはなんだか照れくさいでしょう。これからも撮ることはありませんよ」

 確かに、料理は写真に写すものではなく、食べるものだ。


昭和の下町の風景を撮り続けた<br />カメラマンが営む浅草橋の洋食屋。<br />名物はオムライスと、ボリューム満点の三色ライス

「一新亭」

◆住所
東京都台東区浅草橋3-12-6
※総武線 浅草橋徒歩6分
◆電話
03-3851-4029
◆営業時間
11:30~20:00
日祝休み