屋上にブルドーザーがあったビル
喫茶店、洋食店のシーザーは溜池交差点のコマツビル地下にある。コマツビルといえば1991年まで屋上に黄色いブルドーザーが載っていた。わたしはてっきり本物だと思っていたけれど、シーザーの料理長、吉田治に訊ねてみたら、次のような答えだった。
「あれ、模型ですよ。本物よりずっと大きいもの。入ったことあるんだ。なかは会議室になっていたの」
同店の創業は1973年。ビルが建てられてから50年だから、完工の7年後に入居したことになる。
「朝の8時からやっていて、夜は午後7時までです。ランチの時間が長いのと、客が多いのが特徴かな。ランチタイムは午前11時から午後4時まで。その間に200人は来ます。うちは詰め込んで80人しか入らない店ですから、昼の間はずーっと満席ですね。
常連の人が多いですね。コマツさんは会長、社長から新入社員まで、うちに来たことのない人はいないと思う。でも、人数としてはNTTドコモさん、スター銀行さんが多いかな」
シーザーのランチはおかず2品と大盛りのご飯が標準だ。おかず2品もたとえば豚肉のしょうが焼きとチーズミートコロッケのようにかなりボリューミーなそれが出る。
ふたたび吉田治の話。
「ご飯は普通盛りで260グラム。パスタ類は茹であがった重量が300グラムくらい。テーブルに運んでいったら、あーっと驚いた声を出す人もいます。でも、大盛はうちの店のポリシーです。だって、ご飯を食べておなかいっぱいにならないと、寂しい気分になるでしょう。うちはお客さんには満腹してほしいんです」
それにしても量は多い。そのうえ、ご飯の量を2倍にするダブル、3倍にするトリプルという注文もできる。
たとえばカツカレーは1100円だ。
「ご飯をトリプルにしてください」
そう注文したとする。吉田シェフは260グラムの3倍の780グラムのご飯を皿に盛る。とんかつが1枚だと「ご飯とのバランスが悪いから」、とんかつも増やす。さらに、カレーはご飯をすべて覆うようにかけまわす。そのため、巨大皿に、ご飯とかつとカレーの海ができてしまうのだが、それでも体育会の学生は嬉々として平らげる。
しかも、値段はご飯の追加分しか取らない。太っ腹な店である。