「HMWアプローチ」は伝染する
バサデューは「どうすればできそうか?」(HMW)のアプローチを、P&G以外の会社にも少しずつ紹介するようになった。その中の一つにハイテク企業のサイエント社があった。そして、サイエントでバサデューの信奉者になったデザイナーのチャールズ・ウォーレンが、IDEOに転職したときにこの方法を持ち込んだ。
IDEOのティム・ブラウンは、「どうすればできそうか?」を問うという考え方を紹介されたとき、なんとなく「最初は懐疑的だった」という。けれどもウォーレンが言うには、ほどなくIDEOは会社全体でQストーミングを行うようになり、700人もが一緒になって質問をするようになった。
このHMWアプローチは人から人への「伝染性」が強く、チャールズ・ウォーレンがIDEOからグーグルに移るとすぐに新たなファンが見つかった。ウォーレンはユーザーエクスペリエンス・デザインチームを率いて、Google+(グーグルプラス)の立ち上げに取り組み、毎日、「どうすればできそうか?」を問い続けた。
そうしてグーグルでも、「どうすれば、検索結果からインフルエンザの流行を予想できそうだろう?」から、「どうすれば、ソーシャルメディアで自分の生活をもっとシェアすることを、もっと多くの人に、もっと楽しんでもらえそうだろう?」まで、HMW型の問いが一気に広がった。
また、最近、グーグルプラスチームのメンバーを通して、HMWはグーグルからフェイスブックにも伝染した。
この質問形式がとりわけ効果的なのは「かなり大胆だが達成可能な課題」に対してだが、ほぼどんな課題にも使えるとHMWの支持者たちは言う。ただしブラウンによると、範囲があまりにも広い(たとえば「どうすれば、世界の飢餓を撲滅できそうか?」など)か、あまりにも狭い(「どうすれば、来期に5%の増益を達成できそうか?」)とうまくいかない。
ブラウン曰く、正しいHMWの問いを見極めることは一つのプロセスであり、「最高のポイント(スイートスポット)を探し出さなければならない」のだ。
(本連載は、書籍『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』より引用しています)