株主総会2025#29Photo:PIXTA

東証スタンダード上場の大盛工業で、監査等委員の1人が会社の不透明な資金調達と調査妨害を理由に、今月予定される株主総会で経営陣の再任に反対する意向であることが、分かった。監査報告書に「付記事項」として自らの意見を記載し、経営陣と対立する異例の事態に発展する可能性が高い。証券取引等監視委員会や東京証券取引所も事態を把握し、調査を進めている。特集『株主総会2025』の本稿で詳報する。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

疑惑の経営陣vs物言う監査等委員
問題の舞台となった大盛工業とは

 大盛工業は、1967年に設立された建設会社で、東京都千代田区に本社を置く。主力は上下水道工事を中心とした土木事業で、その他に不動産事業なども手掛けている。96年に東証2部に上場した。

 今回の疑惑の中心人物と目されているのが、山口伸廣会長だ。20代で設立した建築会社を皮切りに不動産業を中心に事業を拡大し、40代で資産を築いた実業家として知られる。

 その後、会社乗っ取りで資産を失うも再び起業し、大盛工業を含む複数の企業の経営に関与してきた。また、美術館の設立や国際的なアートコンペティション「アートオリンピア」を創設するなど、芸術文化活動への支援にも積極的に関わっている。大盛工業へは2010年に取締役に就任し、21年10月より取締役会長を務めていた。

 問題の発端は、その山口氏ら取締役全員が出席して開かれた、22年7月の取締役会にある。そこで決議された取引が、山口氏への実質的な利益供与に当たる可能性があると監査等委員は問題視しているのだ。

 その疑惑とは何か。次ページで明らかにする。