「事前に何の説明もなく、突然300万円を請求された」
 「強引に契約を結ばされた」
 「無料相談のはずが、料金を取られた」

 全国の消費者センターなどに寄せられたこれらの苦情。いずれも、弁護士に対するものだ。その数は10年前の6倍を超え、昨年度は1900件余りにのぼっている。急増する“弁護士トラブル”の現場を取材して明らかになってきたのは、自らの利益ばかりを優先する弁護士たちの姿。そして、弁護士が暴力団関係者とつながり犯罪にかかわるケースも増えているという深刻な実態だった。

 弁護士法第一条には、「弁護士は基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」とある。“正義の味方”であるはずの弁護士に一体何が起きているのか。

弁護士が返還された
借金の過払い金を着服?

 今年1月、北海道の会社員の男性が借金の整理を依頼した弁護士を訴えた。男性は3年前、毎月10万円をこえる返済に行き詰まり、東京の弁護士に相談した。その結果、残った借金は大幅に減って189万円となり、月々の返済額も半分以下になった。

“正義の味方”はなぜ堕ちた? 急増する「弁護士トラブル」 自分の口座に振り込まれたままの過払い金を依頼者に返還していなかった弁護士。「忙しくて、つい、うっかりしていた」と話す。

 ところが今年になって、男性は思いがけない事実を知った。男性に返ってくるはずの250万円もの金が2年も前に弁護士の口座に振り込まれたままになっていたのだ。法律の上限を超えて払いすぎていた「過払い金」だ。これを返済に充てていれば、借金はすべて帳消しとなり、この2年間の返済は全く必要なかったことになる。

「弁護士は過払い金を着服するつもりだったのではないか」

 男性の疑問を確かめるため弁護士の事務所を訪ねた私たちに、弁護士は後から男性に渡すつもりだった、返済額は減っていたので苦労していないはずだと答えた。弁護士は今年6月、男性と和解。自らの報酬と経費を差し引いた200万円を男性に渡した。

 違法な業者と手を組んだとして訴えられた弁護士もいる。弁護士は九州各地で借金の相談会を開いていた。弁護士を訴えた女性は夫が病気になった20年前から生活のための借金と返済を繰り返してきた。トラブルのきっかけは去年、1人の業者が自宅を訪ねてきたことだった。業者は「過払い金が戻ってくるはずだ、いい弁護士を紹介する」と持ちかけ借金の相談会に連れて行ったという。女性はそこで弁護士と契約を結んだ。

“正義の味方”はなぜ堕ちた? 急増する「弁護士トラブル」過払い金返還の手数料として、業者が請求してきた額は263万円。写真は業者が発行した領収証。

 7ヵ月後、女性は弁護士から呼び出された。契約を結んだときと同じ相談会の会場で、返ってきた過払い金だとして600万円もの現金を受け取った。これほどの大金を直接手渡されると思っていなかった女性は、札束を持つ手が震えたという。女性が外に出ると、車で来ていた業者が待っていた。女性は金を請求する業者に従い、弁護士から受け取ったばかりの現金から263万円を手渡したという。