「薬価の連続改定が、ひとまず避けられた」。6月1日、安倍晋三首相が消費税増税の再延期を表明し、製薬各社はこぞって胸をなで下ろした。
薬価の改定は通常2年に1回。西暦の偶数年に行われる。
ところが、その“谷間”の年となるはずの2017年4月に、増税が有言実行されれば、増税分の価格上乗せに併せて、市場実勢価格に基づいた薬価の引き下げが図られることが、製薬業界の目下の最大懸念となっていた。1997年の消費税増税の際もマイナス改定だった。
このたびの増税延期で、国は17年度の薬価改定を見送る方針だ。とはいえ、製薬業界がホッとできるのは、ほんのつかの間である。
「2年半の先送りは中途半端」と大手製薬幹部が歯がみするように、次の増税は19年10月。またも谷間の年だ。早くも18~20年度の3年連続改定に不安の声が上がる。
国としても改定の見送りで“皮算用”が狂った。「こちらも今後どうなるのか知りたいぐらい」と厚生労働省幹部は困惑する。
政府は16年度からの3年間、社会保障費の伸びを1.5兆円(年間5000億円)以内に抑える目標を掲げる。とりわけ、薬剤費はそのいけにえにされがちだ。