政府は、生活保護基準の検証とともに、生活保護法の2013年改正に次ぐ再改正を行う意向である。生活保護を経験したシングルマザーは、政府の狙いと本来必要なはずの検討を、どう考えるだろうか?

再開した生活保護基準部会に感じる
名状しがたい禍々しさ

次なる生活保護法の改正は、シングルマザーをはじめとした人々にどのような影響を与えるか

 2016年5月27日、生活保護基準部会が約1年半ぶりに再開された(資料議事録)。傍聴した私は、厚労省の示した今後のスケジュールを見て絶句した。そこには、来年2017年末に再度の生活保護法改正を行う予定と、2018年からの施行が示されていたからである。

 再開された生活保護基準部会のメンバーは、これまでの部会長・駒村康平氏(慶應義塾大学・駒村ゼミページ)、同じく部会長代理・岩田正美氏(日本女子大学名誉教授(本連載・政策ウォッチ編 第93回第94回)が留任。税・社会保障・国家財政に関する研究で知られる小塩隆士氏(一橋大学教授)が加わり、女性・子ども・子どものいる世帯の状況を悪化させないために強い主張を続けた阿部彩氏(首都大学東京教授)も引き続き参加している。

2016年5月27日、厚労省が示した生活保護基準見直し・生活保護法改正のスケジュール案。生活保護法改正にあたっては、施行状況の確認、実績収集・確保などが既に行われ、本年夏から冬にかけて委員会が設置されて検討開始、翌2017年後半に法案上程、という予定となっている
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 とはいえ、メンバー構成を見る限り、これまでの生活保護基準部会と同様、数多くの制約や政府・財務省・厚労省の意向の中で、貧困状態にある人々を置き去りにしない議論が期待できそうではある。

 しかし厚労省は、生活保護制度そのものに関する専門家委員会を、生活保護基準部会とは別途、設置する予定である。その委員会では、改正生活保護法とともに2013年に成立した生活困窮者自立支援で、施行から3年後に予定されていた見直しとともに、生活保護法そのものの改正を検討する予定とされている。その委員会は、いったいどのような顔ぶれになるのだろうか? 何がどう議論されるのだろうか? もちろん厚労省は、既に「ゴール」を設定していたり設定させられていたりするのだろうし、ゴールに合わせて新しい委員会の人選も済ませているのだろう。

 私は、なんともいえない「禍々しさ」を感じながら傍聴していた。傍聴終了後、厚労省の外に出た途端、すすり泣きが止まらなくなった。私の良く知っている、生活保護で暮らし、あるいは生活保護が必要な状態にある人々が、近い将来、生活の基盤を現在以上に掘り崩されていくとすれば、今後の私の生活からは日常の小さな幸せを喜び、達成感、前進、自己肯定を積み重ねて行くことが失われるだろう。

 自分が生活保護を必要とする状況になれば「生活が厳しすぎる」という理由から当然そうなり、自分が生活保護を必要としないなら、目に見える「格差」が自分を苦しめることになる。

 しかし何よりも、問題は「生活保護で暮らす人々にとってどうなのか?」である。そこで私は生活保護経験を持つ2児のシングルマザー・星野みゆきさん(仮名・48歳)に、基準部会で示された厚労省の予定と方針を話してみた。星野さんは、考えこんでしまった。数十秒後に口を開いた星野さんは、

「イヤな予感がします。生活困窮者自立支援法の3年後の見直しは、最初からスケジュールにあったけど……ここまで、堂々と、大掛かりにやろうとしているとは……」

 と語りはじめた。