女性マーケテングを手がけるトレンダーズを起業し、2012年に当時女性社長として最年少で東証マザーズに上場を果たした経沢香保子さん。現在は1時間1000円〜スマホで即日の予約手配も可能なベビーシッターサービス「キッズライン」を展開し、今年4月には新著『すべての女は、自由である。』を出版しました。そんな経沢さんは、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』に触れ、アドラー心理学の虜になったといいます。若手女性経営者として時代の寵児となったものの、その後、公私ともに数々の困難にぶち当たってきた経沢さんは、アドラーの思想のどのような部分に惹かれたのでしょうか。著者の一人である岸見一郎氏との対談を2回にわけてお届けします。(構成:宮崎智之、写真:石郷友仁)
人生の困難にぶつかった時、
取るべき態度
キッズライン代表。桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳の時に自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配も可能な安全・安心のオンラインベビーシッターサービス「キッズライン」を運営中。著書に、『自分の会社をつくるということ』(ダイヤモンド社)などがある。 日々の発信、facebook、Twitter
経沢香保子(以下、経沢) 『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』ともに拝読させていただき、とても感銘を受けました。私の中では勝手に「赤本」「青本」と呼ばせてもらっています。
岸見一郎(以下、岸見) たしかに、装丁が青と赤ですからね(笑)。
経沢 岸見先生に伺いたかったんです。私の著書『すべての女は、自由である。』は、「自由」をテーマに書いたのですが、ちょっとアドラーっぽくないですか?(笑)
岸見 そうですね。私も、まず「自由」という言葉が気になりました。でも、裏を返せば自由という言葉が出てくる時点で、本当の自由ではないんですよね。
経沢 え、でもなるほどですね!
岸見 本当に自由な人は、「自由である」という発想はしないので、どういうことなのかなと思いながら読み進めました。驚いたのは、経沢さんは、非常に大きな人生の難局を、何度もくぐりぬけてきていらっしゃる。
経沢 ある意味、サバイバーなんです。3000万円の詐欺にあったり、自分で作った会社を苦渋の選択で辞めたり、離婚を2度したり。子どもを難病で亡くしたことも正直に書かせていただきました。
岸見 経沢さんの人生に向き合う態度や意思決定が、アドラー心理学の考え方に似通っていると思いました。人生の困難にぶつかった時に取り得る態度は、三つしかありません。一つは、楽天主義。つまり、「なんとかなるさ」です。大変な問題にぶつかっているのに「なんとかなるさ」と考え、結局なにもしない。でも、経沢さんは、そういう人ではないですよね。なぜなら経沢さんが直面した困難は、そのままではなんともならないですから。「なんとかなるさ」と言っている場合ではないような、数々の困難を経験されてきている。もう一つは、真逆の「悲観主義」です。このタイプも悲観するだけで、なにも前に進めようとしない。本当に取るべき態度は、「楽天主義」でも「悲観主義」でもなく、「楽観主義」です。
経沢 なるほど、「楽観主義」ですね。
岸見 「楽観主義」は、「なんとかする」という考え方です。そういう力強さを、経沢さんのご著書から感じました。私が直面した困難の比ではない経験をされている。とても勇気をもらいました。
経沢 先生からそんなふうに言っていただけるなんて。うれしいです。