税務当局をはじめ、行政府が中長期にわたり、「パナマ文書」が公表したような富裕層の「税金逃れ」の呆れた実態を掌握していながら、手を拱くだけで、ほとんど放置してきた社会的な責任は重大である。これを機会に、行政府は国家百年の計に立って、安易に取り易い非富裕層から広く浅く徴税する、現行の「弱い者いじめ徴税」の惰性から脱却すべきだ。

 富裕層の「税金逃れ」を決して見逃さない、強い者にも強い徴税を行う体系を根本的に組み直し、本来の所得再分配機能を取り戻せるよう、租税負担の公正化と平準化へ向けた抜本改革に、真剣に取り組んでほしい。

富裕層の税金逃れを炙り出せば
消費増税の数倍の効果が出る?

 行政府の試算によると、消費税率を8%から10%へ増税するのに伴い、期待されている税収の増額分はわずか5.8兆円に過ぎない。元国税調査官の証言によると、「海外に資産や所得を移せるレベルの富裕層の『税金逃れ』の実態は計り知れず、行政府のやる気次第では、それを炙り出す効果は5.8兆円の数倍に及ぶ」という。

 そんな宝の山を見逃がしたままで、その穴埋めをより安易に一網打尽で捕捉できる消費税とその増税に求めることは、「経国済民」の根幹であり社会基盤でもある徴税体系の本来の趣旨と狙いに相反する、反社会的な愚策であると言わざるを得ない。

 国内外の経済情勢はなお不透明で、2年半となる30ヵ月先であれば、日本が懸案のデフレを脱却し、消費税の増税を受け入れるだけの客観情勢が整ってくると思うのは単なる願望であり、その保証は何もない。そんななかで近い将来、消費増税を断行する政治的な判断は決して「新しい判断」とは言えず、無謀な蛮勇に過ぎない。GDP(国内総生産)の屋台骨である個人消費が伸び悩むなかでの消費増税は、より多くの善良な国民を委縮させ、国力を劣化させて、アベノミクスの第3の矢である成長戦略に水を差し、足を引っ張るだけで、経済の歯車を悪循環させかねない。

 パナマ文書によると、「海外に資産や所得を移せる」レベルの富裕層は税金のかからない海外のタックスヘイブン(租税回避地)を利用して「払うべき税金を払わずに、いわゆる税金逃れ」をするだけではない。各国の税務当局が富裕層の「税金逃れ」を未然に防ぐためとして、富裕層に課税する税率を大幅に引き下げ、租税の負担は「税金逃れ」のできないレベルの非富裕層に押し付け、しわ寄せを強いているという、二重、三重に不公正で悪平等な徴税実態が、同文書から明らかになってきた。