G20会合で見えた
個人課税の3つの論点

G20会合で見えたパナマ文書問題「3つの論点」先週ワシントンDCで開催されたG20会合の声明文を解読しながら、個人課税を念頭において、パナマ文書問題に関わる3つの論点を述べよう

 5月10日に公表が予定されているパナマ文書に関してマスコミの報道が日に日に大きくなっている。しかしその内容には疑問を抱くものもある。とりわけ、わが国の税制についての理解が十分でない報道も多く見受けられる。

 そこで、以下、筆者が疑問に感じたことを中心に、さらには先週ワシントンDCで開催されたG20会合(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)の声明文も解読しながら、個人課税を念頭において3つの論点について述べてみたい。

 第1の論点は、「すべて法にのっとっており合法である」という(一部政治家などの)認識は間違いということである。確かに、パナマなどタックスヘイブンに資金を預けたり会社を設立したりすることは、当事国ではもちろんのこと、日本でも合法である。

 しかし、問題はその先である。連載第112回で述べたように、わが国は全世界課税方式といって、日本居住者が全世界で得た所得に対して課税し、二重課税については申告の段階で調整する方式をとっている。

 したがって、日本居住者は、タックスヘイブンを含めた国外で所得を得れば、日本の税務当局へ申告しなければならない義務がある。これが適正に納税されていなければ、それは税をごまかした(脱税)ということになる。

 もう1つ、わが国にはタックスヘイブン対策税制が導入されている。出資金額などの50%超が、内国法人や日本居住者によって直接・間接に保有されているタックスヘイブンに所在する会社について、その会社の株式などを5%以上保有する法人や居住者は、その会社に留保した金額を日本の当局に申告する義務がある。個人の場合、雑所得として申告することになる。

 もっとも、この規定には例外がある。実際に日本の法人や居住者が、タックスヘイブンにつくった会社を「管理支配」しているなど適用除外基準を満たせば、この規定は適用されない。たとえば、本人自身が現地に赴き役員としての職務執行を行うなど、実際の活動をしていればセーフとなるのである。タックスヘイブン対策税制は、ここまで確認されて初めて発動されるので、今回個人の名前が出た場合、事実関係を精査する必要がある。

 つまり、タックスヘイブンに送金し会社をつくることは合法だが、その後の税務処理がきちんと行われていなければ、「脱税」に問われるということである。