「イギリスのEU離脱は経済的に不合理な決定であり、世界経済を混乱させる望ましくない決定だ」とされることが多い。しかし、この議論は大いに疑問だ。とくに、金融活動について、イギリスの離脱には十分な理由がある。

大勢だった残留支持の論調
離脱で短期的には世界経済が混乱

 イギリスのEU離脱問題に対して、世界の主要な報道機関のほとんどは、残留が望ましいとしていた。ユーロ参加には反対だったイギリスの経済誌「フィナンシャルタイムズ」(FT)も、今回は社説で「残留に1票を投じるべきだ」としていた。

 また、イギリス財務省、イングランド銀行、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)等のさまざまな機関が、こぞって離脱のコストを指摘していた。

 短期的に見れば、イギリス離脱によって世界経済が混乱することは避けられない。なぜなら、それは突然の体制変更をもたらすからだ。

 以下に述べるように、イギリスとEU加盟国との関係がどうなるかは、今後決められるさまざまな取り決めに依存している。ところが、これらがどうなるかが現時点でははっきりしない。それが不確実性を強めている。現在の世界経済の動揺は、これによるものだ。

 さらに、離脱派は、最後の段階で、移民問題に焦点を当てた主張を展開した。これが労働者や一般市民の共感を呼び、離脱派の勢力が増したことは無視できない。

 そしてこれが、「移民を受け入れたくないイギリスの身勝手な決定」という良識派からの批判を強めた。

イギリスの離脱の根底には
巨大官僚組織と規制への反発がある

 こうした状況下で、「イギリスの離脱には、経済的な観点から見て合理的な理由がある」と指摘すれば、「何とへそ曲がりのことを言うのか」と批判されるだろう。

 しかし、それを認識することは、大変重要だ。なぜなら、「イギリスの離脱が経済的に不合理」との考えは、前提に基本的な問題があるからだ。

 この問題の根底には、「巨大官僚組織による規制の強化と、それに対する反発」という問題が横たわっているのである。