前例のないEU離脱
そのプロセスは不透明
先週23日、イギリスの国民投票でイギリスはEU離脱を決めた。多くの人には予想外の結果であり、離脱へのプロセスは不透明になっている。まさしく、未知への領域であり、誰も確かなことを言えない状態だ。
BBCを聞いていると、やたらとリスボン条約50条という用語が出てくる。役人時代の性で、こうした条文は自分で見なければ納得できないが、今はよい時代で、ネットで簡単に調べられる(http://www.lisbon-treaty.org/wcm/the-lisbon-treaty/treaty-on-European-union-and-comments/title-6-final-provisions/137-article-50.html)。
大雑把にいえば、EU加盟国は、EUから離脱できるが、欧州理事会に通知しなければいけない。その後で、脱退する加盟国とEUは脱退のための協定に合意する。ただし、その合意のための期間は原則2年である。もっとも、欧州理事会が全会一致で延長を認めれば、さらに延長できる。
筆者は、ここ数日間、このイギリスのEU離脱問題でテレビなどに出演する機会があったが、この合意のための2年を知らずに、「今から」と誤解して解説した人もいて、びっくりした。
実は、EUの前身であるECでは、デンマークのグリーンランド自治政府が1985年に脱退した例があるが、EUでは初めてのことなので前例はない。ということは、これからわからないことだらけなのだ。
例えば、脱退に関する通知をいつまでに行うかも、交渉次第だ。キャメロン首相は次の首相にやってほしいというが、EU側では急ぐという意見もある。イギリスは焦って通知してもメリットはないし、ゆっくり通知して時間稼ぎをしたいだろう。
一方、EUとしては、今後や他国の脱退予備国のこともあるためイギリスに厳しく当たりたいので、「速やかに」と言って時間稼ぎを防ぎたいだろう。いずれにしても交渉ということだ。
先行き不透明感が経済に悪影響
ボディーブローのように効いてくる
ただし、こうした先行きの不透明感は、政治交渉につきものだが、ビジネスでは非常に困った事態だ。しかも、脱退交渉に関わる話が不透明ということは、その後の世界の展望を描きにくい。制度というのは、空気のようなもので、安定しているときには存在すら忘れてしまうが、不安定だととたんに困ってしまう。