EU離脱で不安視される影響は
リーマンやギリシャと違う
6月23日の英国の国民投票は、大混乱の引き金になった。多くの人にとって、リーマンショックを彷彿とさせる出来事に見えるだろう。本稿では、その連想が正しいかどうかを考えてみたい。
まず、やや過剰反応だと感じる根拠は、英国がEU離脱をするにしても、それは先の話であるからだ。英国がEU離脱を欧州理事会に通告してから2年以内の交渉期間がある。離脱のルールは決まっていないし、交渉期間が長引く可能性もある。
英国に拠点を置く企業が、他地域への移転するリスクが強く警戒されているが、その判断は、離脱後のデメリットがどこまで大きいかを見定めてからではないとできないはずだ。つまり、当面、多くの企業は新しいルールの内容がどうなるかを様子見しようとしている段階なのだろう。
はっきり言えば、実体的には、投票結果が出ても何も変わっていないのが実情である。何も変わっていないのに、マーケットが激震するのは信認が崩されたからだ。英国がEUに加盟するメリットを捨てるという意思決定のショックが先取りされて、ユーロ圏をはじめ世界経済への悪影響が連想された。円高・株安はその連想によるものだ。
実体経済には、投票直後に悪影響がないとしても、今後株安・円高などの金融混乱が長引くことによって、ネガティブフィードバックすることが予想される。今のところ、EU離脱問題の影響は、実体よりも「連想」のところにポイントがある。ネガティブフィードバックが始まる手前で、政府・日銀が機動的に動けば、円高・株安をある程度は反転させることができると考えられる。
さて、今回のEU離脱とリーマンショックは実体面で全く異なる。リーマンショックは実体面で金融機関の経営悪化があって、それに反応した連鎖破綻への強い警戒から、あらゆる金融取引が停止した。それが貿易金融の取引にも飛び火したから、日本経済への甚大な打撃になった。実体面で、証券化商品の損失が連想を通じて拡大したことも重要である。