意識していない力、好きではない仕事力で
意義のある仕事ができる場所がある

 以前、少しだけ紹介したことがある例ですが、大手電機メーカーで生産性管理の仕事をしていた人が、ある菓子メーカーに転職しました。

 その菓子メーカーがこれから成長するために、工場の整備が必要だったのですが、なにせ、その工場は当時、工場というよりは工房に毛の生えた程度で、高品質の商品を量産できるレベルからはかけ離れていたのだそうです。生産規模拡大のためにやるべきことは、無数にあったわけです。

 最初は彼のやり方に工場長が反発したそうですが、やろうとしている次元が違っていることをすぐに認識したようです。工房を工業化するという次元の話だったのです。協力体制はすぐにできました。新しい生産体制は順調に整っていきました。

 しかし、実際に組織に入ってみると、問題は生産体制だけではありませんでした。人事マネジメントや人材育成もやらなければいけなかった。彼はその専門家ではありませんでしたが、大きなメーカーで管理職をしていたので、それなりの知識がありました。前の会社ではその程度の人材マネジメントの知識は当たり前でしたが、立ち上げ期の小さな菓子メーカーにとっては、圧倒的な知識でした。

 売り物にしていなかった能力でも彼は大きな貢献をしたわけです。彼は入社後ほんの数ヵ月で、経営者から高い信頼を勝ち取ることができました。

 まさに彼は、転職によって天空の星になろうとしているわけです。

 古い話ですが、こんな例もあります。大手企業で資材管理の仕事をしていたある方が定年退職をして、ボランティアで海岸の重油流出事故の現場に赴きました。現場は混乱の極みでした。スコップや手袋など、作業に必要なあらゆる物資が足りないのです。

 ところが資材置き場に行ってみると、役に立つ資材が使われぬままがたくさん積まれている。今でも災害の現場ではよくある話です。資材管理がうまくできない。ロジスティックスが機能していないのです。

 そこで彼は倉庫番を買って出て、ロジスティックスの体制整備に着手しました。その結果、問題は程なく解決しました。その後、その人はさまざまな災害現場などでロジスティックスの専門家として活躍しました。

 彼は現役時代、好きで資材管理の仕事をしていたわけではありませんでした。第一線を退いた後に、そうした仕事をさせられていたようです。ところが、ボランティアの現場でそのスキルが生きた。嫌な仕事であったものが、皆から感謝される、しかも自分の裁量でコントロールできる意義のある仕事になったわけです。

 この世に輝く数多の地上の星たちには、それぞれかけがえのない宝物があるのです。それをしっかりと把握して、その力を使って、さらに輝けるような場所を探してほしいと思います。