第21回から、社会で価値を生むための7つのメタ能力について説明している。対人スキル、リーダーシップ、チームワーク、オートミーについて語ってきたが、今回は「業務遂行能力」。最もイメージしやすい能力のように思えるが、これがなかなか難物だ。
大手企業の社員に最も
欠如しがちな社会人基礎力とは
業務遂行能力は2段重ねになっている。一段目は社会人基礎力。仕事をする上で、どの会社、どの業務でもおよそ社会人として身につけておくべき、“働くひとの基本能力”だ。
社会人基礎力としては、一般的に以下のような項目が並ぶ。業務企画力、計画性、安定的な運営力、処理速度、計数処理能力、情報収集力、業務改善への姿勢、コスト意識、トラブル処理能力、柔軟性、実行力、継続性、経営資源の利用、目標の管理と改善……。
ご覧のように幅広く、そう簡単にすべてを身につけられるものではない。基礎力とはいうものの、これらをすべて高度に身につけていれば、稀代の名リーダー・超一流の経営者にもなれる奥深さがある。
とはいえ、完璧に身につけるのは難しいとしても、これらは身につけておかなくてはならない必修科目だ。40代以上で周囲から期待され続けるためには、バランス良く社会人基礎力を身につけていることがとても重要になる。
もちろんそれぞれの人ごとに、得意分野と苦手分野があって当然だが、自分で「苦手だな」と思う項目については、心して強めていかないといけない。
ここでは、特に大手企業に長く勤めた人に欠如しがちな社会人基礎力ついて説明しておきたいと思う。
それは「コスト意識」だ。「あなたは仕事をする上で、コストを意識していますか?」と聞けば、多くの人が「もちろん!」と力強く答えるだろう。しかし、自信満々にコスト意識があると答えた人が、平気でオフィスの照明をつけっぱなしにし、空調の設定温度を守っていない。人数より多めにコピーを取ることもしょっちゅうだったりする。つまりは意識しない無駄がたくさんある。
特に光熱費や文房具代、情報取得費などは大企業にとっては陰に隠れたインフラコストのような位置づけになってしまっている。頭割りをするとたいした金額ではないから無視しがちなのだが、これが中小企業やベンチャー企業となると、無視することなどとてもできない。
たとえば新聞はどうであろうか。大手企業ならどこでも、新聞を何紙も取っている。私も最初に勤めた野村総合研究所では、ものすごい種類の新聞を読んでいた。
しかし、独立したらそんなに何種類もの新聞を取ることなど到底できないことにすぐ気がついた。そこで、思い切って一般紙一紙だけに限ってみた。インターネットが普及し始めて、無料でさまざまな情報を入手できるようになったという時代背景もあったので、大量の新聞を読まなくなっても、特に業務に支障はなかった。必要な場合は図書館に通って読んだものだ。