為政者が、高らかに掲げた政策の論理を自ら再考し、その結果、重大な矛盾が生じていることに気が付いたとする。そのとき、一体どんな態度をとるものなのだろう。

 矛盾を認め、その解決策を含んだ新たな政策を打ち出すのか。あるいは、新たな実現策を打ち出そうとはするのだが、政治的困難さの前に諦めてしまうだろうか。それとも、“不都合な真実”とばかり、気が付かなかったことにしてしまうのか。

 菅直人首相は、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と叫び続け、民主党代表選を突破した。

 確かに、雇用状況は芳しくない。日本の失業率は戦後最長の景気回復が始まったとされる2003年ころに5.4%まで上昇し、その後は4%を割るまでに低下し続けた。ところが、2008年9月のリーマンショックで再び悪化、現在は5.2%程度と見られる。戦後最悪の水準にあることは間違いない。

 さて、その失業率は質の異なる2種類に分けて考えることができる。「需要不足失業率」と「自然失業率」である。

 「需要不足失業率」は、経済の悪化によって労働需要が減少し、労働供給を下回ることで上昇する。早い話が、景気が悪化してモノが売れなくなれば、企業経営者は雇用を抑え、あるいは減らしてしまうということだ。だから、リーマンショックのような大きなショックが経済に加われば、いっぺんに需要不足失業率は上昇してしまう。

 「自然失業率」は、景気循環には左右されない。労働市場においては、好不況にかかわらず、求人側と求職側の間において求める技能や待遇など条件面でミスマッチが常に生じる。それは、適性や能力は、労働者個々によって違うからだ。仮に、労働における総供給と総需要が一致していたとしても、例えば、求人側がIT技術者を求めているのに、求職側にITスキルが欠如しているのでは雇用は成立せず、未充足の求人と失業者が同数存在することになる。これが、自然失業率である。