父親は開口一番、「女房が娘に『医者と結婚しなさい』と言ってるんだけど、何とかしてくれないかな」と言うのだ。「どうしてお医者さまなのですか?」と聞いても、「いやあ、女房がさ、『医者が命』っていうからさあ……」というばかりだ。

 この家庭は、父は弁理士で、母は専業主婦。父親も立派な職業であるにもかかわらず、母親はそれを大した職業とは思っておらず、「一番立派な職業は医者」という考えを持っているようだった。あげく、娘の前では「お父さんはそんなに仕事ができないから……」と馬鹿にする始末。しまいには、娘を医者と結婚させたいと考えるに至ったようだ。

「自分の好きな人」より
「お母さんが好きだと思う人」

 最近の女性と接してきて思うのは、母親と娘の距離感が非常に近いことだ。遊びに行くのも一緒、ご飯を食べに行くのも一緒、行った先での定番のネタは「お父さんは三流だから」という父親の悪口だ。無意識かもしれないが、そうした密な関係性により、娘も「自分の好きな人」と結婚したいと考えるより、「お母さんが好きだと思う人」を選びがちだ。

 それにしても母親はなぜ娘を医者と結婚させたいのか? それは、自分が医者と結婚したかったという裏返しではないだろうかと私は分析する。彼女自身が医者の妻になりたかったのであり、その夢を娘に刷り込んでいる。父親のほうは、それを察しているかはわからないが、妻の口うるさい要求を満たすために娘を医者と結婚させなくては、と動いているにすぎない。

 さて、『医者が命』という“お医者さま病”の母親を持ってしまった女性の結末はというと、彼女のルックスはいまいちだったが、年齢としては若いほうだったので、無事40歳代の医者と結婚することができた。ついに母親は念願の「自慢の婿」を手に入れ、自分の結婚の時には得られなかった、周囲からの羨望のまなざしを手に入れることができたということだ。

 しかし、女性たちはなぜそこまで「夫の職業」でうらやましがられたいのか? それについては、次回お話しすることにしたいと思う。