なぜ管理職になると
キャリアの危機に直面するのか
年功序列・終身雇用慣行がまだ成り立っていた時代には、現場の業務に関わらない、いわば純粋な中間管理職が存在しました。しかし最近はそうした人たちを見かけることは少なくなり、管理職として求人があるのは新入社員や若手社員を束ねて教育・育成しながらチームとして成果をあげる立場のポジションか、自分も第一線に立つプレーイングマネージャーが多くを占めます。
前者の教育・育成的役割の度合いが強い管理職がいなければなかなか若手社員は育ちませんし、サービスも回りません。しかしキャリア形成や転職という観点から見ると、そのポジションに座ることはかなり危険が伴います。
たとえばある業界の大手企業では新卒社員をたくさん採用しどんどん営業に回らせるのですが、知識も経験も常識も足りないので自ずと顧客からのクレームもどんどん入ります。この会社の管理職はクレーム処理に走り回りつつ、それを通じて新卒社員の教育も行い3年ほどで一人前の水準に育成する役割を担っています。
こうしたタイプの管理職が転職市場に出たとき、同じような組織から同じようなポジションの求人があれば転職はできるでしょうが、やがて先細っていきます。年齢がいけばいくほど若手社員とのギャップが生まれてきますし、自分が第一線に立っているわけではないので有用な経験の蓄積も人的ネットワークの構築もあまりできないからです。
では独立してみてはどうかと考えてみても、クライアントや取引先との直接的なつながりもないし、大した知識や専門性もないことに気づくでしょう。転職や独立をせず会社に残ったとしても、そんな状態で定年まで勤めあげられるかどうかはかなり難しい。結局、八方ふさがりの状況に陥ってしまうのです。