「インテル、クアルコム、エヌビディアなど、世界の半導体メーカーの勝ちパターンは、独立系で半導体専業であること。われわれは、どこかのメーカーの傘下に入る道はない」
6月28日に就任したルネサスエレクトロニクスの呉文精社長兼最高経営責任者(CEO)は、産業革新機構が保有するルネサス株の買収に意欲を示す日本電産をけん制した。
ルネサス株の69%を握る革新機構は、2013年9月に1株120円で取得。15年9月にロックアップ(株式売却制限契約)が解除され、売却の検討に入ったが、それ以来、エグジット(出口)戦略は曲折をたどっている。
まず15年12月25日、呉氏の前任の遠藤隆雄氏は、CEO就任からわずか半年で突如辞任した。遠藤氏は、ルネサスに統合を持ち掛けたドイツの半導体メーカー、インフィニオンテクノロジーズと資本提携を模索していたが、革新機構やトヨタ自動車など大株主から理解を得られず、ルネサスを去った。
次にルネサス株買収に意欲を示したのが日本電産だが、呉氏は日本電産とは浅からぬ因縁がある。13年9月に日本電産の副社長に就いたものの、高い利益目標を課す永守重信・日本電産会長兼社長の下で、思うような成果が出せず15年9月に退任、たもとを分かった。遠藤氏の後任を探していた革新機構がルネサスのトップに据えたのが呉氏だ。