社会人に対して主に戦略、組織変革、リーダーシップなどを教える、中央大学大学院教授の磯村和人さん(51)に取材を試みた。今回と次回は、その際のやりとりを紹介しながら「学歴」について考えたい。

 磯村さんは高校に進学することなく、大検(大学入学資格検定試験)を経て、1983年に独学で京都大学に合格した。父や兄(東大医学部へ現役合格、現在は医師)とともに、「中学校の管理教育と戦う家族」として新聞やテレビなどで報じられた。その奮闘が、1984年放送のTBSドラマ『中卒・東大一直線 もう高校はいらない!』のモデルとなり、一躍有名になった。

 その後、研究者としての人生を歩む。自らの稀有な経験もあり、学歴やその価値、さらに会社員などのキャリア形成や人事のあり方などについても研究する。

 磯村さんは、「日本の社会には学歴を私的に利用する人がいる」と指摘する。その意味を聞いていくと、「学歴病」の真相が浮き彫りになってくる。読者諸氏は、この「学歴の私的利用」をどのように感じるだろうか。


学歴とキャリアという2つの
座標軸で会社員を捉える

仕事でうまくいかない会社員の中には、自分の学歴を言い訳にして、「負け」を認めない人もいる。なぜ日本には学歴を「私的利用」する会社員が多いのか

筆者 日本の会社員の中には、学歴に影響を強く受けている人が多数いるように思えます。その一例が、昇進・昇格で同世代の社員に負けている人たちが、10代の頃の学歴の話を持ち出したりすることです。

磯村 そのような思いになることは、わからないでもないのです。日本では、学歴のインパクトが様々な意味で強いと思います。

 たとえば、「○○大学に入学する」という目標が明確であるし、合格できた場合の達成感がありますね。学力は成績や偏差値で示されるし、予備校などが発表する「偏差値ランキング」もあります。

 しかも、10代という多感な時期に経験しますから、その人の意識に残りやすいのだと思います。受験にはゲーム感覚もありますから、面白い一面もあります。ある意味で、ハマリやすいと言えるのでしょうね。

筆者 確かに、そのような面はあると思います。