米国では大手傘下のメーカーも

 ブランド力と将来性次第では、委託分が年間500キロリットルでも大手をその気にさせられるとはいえ、実際には500キロリットルというハードルを超えているクラフトビールメーカーは数社に限られる。 

 しかし、こうして500キロリットルという明確な“基準”が示されたことで、設備投資に悩むメーカーに、自社での投資とその先の委託の未来図を作ることができる。また、キリンに依頼することができれば、全国流通には必須となる缶での製造も可能となり、瓶がメインのクラフトビールメーカーにとっては飛躍のきっかけにもなる。

 これまで、クラフトビールメーカーの製造委託の受け皿は、自社ブランドの製造に加え、OEM(委託製造)を請け負う新潟県のエチゴビールだった。ところが「エチゴビールの設備の余力にも限界が見えてきている」とクラフトビールメーカー関係者は明かす。

 ヤッホーが切り開いたキリンとの提携は、それに続こうとするクラフトビールメーカーにとって選択肢の1つになろう。

 消費者の中には、小規模醸造を身上とするクラフトビールメーカーが大手と提携することに批判的な見方もある。しかし、視線を海外に向けると、クラフトビールメーカーが大手と組むのは決して珍しいケースではない。

 例えば、クラフトビールの市場シェアが10%を超える米国では、「サミュエル・アダムス」で知られるクラフト最大手のボストン・ビールは、開業当初からファブレス経営で成長し、製造を大手メーカーに任せてきた。

 また、世界のビールシェアの3割を握るベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブは中小のクラフトビールメーカーを続々と傘下に収めており、米国ではこうした買収事例さえも珍しくはない。

「ヤッホー以外のメーカーとも条件が合えば提携したい」(牧原主査)と、キリンも、ヤッホー以外のクラフトビールメーカーの製造受託にも積極的な姿勢を見せる。

 日本のクラフトビールでも米国同様大手集約化が進むのか。その暁には、第二、第三のヤッホーが生まれてもおかしくはない。