京都には国宝のおよそ20%、重要文化財の15%が集中している。2000を優に超える寺院神社、世界文化遺産17か所を有し、伝統産業などの魅力的コンテンツも多彩だ。日本が世界に誇れる稀有な観光地、それがこの街だろう。京都市は観光政策を重点課題とし、5000万人観光都市達成後の新たな観光の目指す姿を打ち出し、外国人や富裕層などの誘致に意欲をみせる。長期的にはビザ緩和などで中国人観光客も増えていくだろう。それらにどう対処していくのか。門川大作京都市長に、その戦略について伺った。(聞き手/船井総合研究所:小林昇太郎)

観光コンテンツの宝庫が京都の魅力
 

門川大作(かどかわ・だいさく)/
1950年11月23日、京都生まれ。立命館大学二部法学部卒業、京都市教育委員会・教育長を経て、2008年2月より第26代京都市長に就任。徹底した「現地・現場主義」をモットーに、市民活動の場をめぐり、就任1年間の訪問数は、約千か所にのぼる。市民と共に汗する「共汗」と市民の視点に立った「政策」の融合をキーワードに、地域主権時代のモデルとなる市政改革を進める。

門川 京都市は10年前に観光客5000万人構想を計画して、戦後の京都では初めて寺院神社はもちろん、官民一体となったオール京都で100を超える事業を立ち上げ、結果として目標数を前倒しで達成しました。この10年間で外国人観光客も増え、街を歩いている欧米人も数多く見かけるようになりました。

小林 京都は文化も歴史も、大変魅力的なコンテンツをたくさん持っていますね。これは京都だけの話ではありませんが、日本人は一人一人が、本当に魅力的で素晴らしいものを持っている。ですが、それを形にして表現したり、発信したりする時、「日本はどうあるべきか」という国、地方の戦略がなく、どうしても場当たり的で、俗人的なものになっているように見えます。日本の価値をより向上させるには、しっかりとしたコンセプトを戦略的にデザインすることが必要ではないかと思います。

観光立国に向けて
京都の担うべき役割と観光戦略

門川 先日、ある欧州の国の大統領が京都に来られ、「京都を知らずして帰ったら、日本を誤解するところでした」と言われたのが印象に残っています。日本の根源を、京都に来て感じたという。そう思うと、京都が観光で担うべき役割はとても大きい。寺院神社、伝統文化、先端産業、経済界、地域力、市民…、あらゆる力を活かし、連携し、大学、都市基盤、環境、交通など、あらゆる政策を融合し、各分野が連携して大胆な観光政策を展開する。そのためのハードルはたくさんあるが、乗り超えるためにネットワークを組んで努力する。世界から多くの人に来てもらって、満足度を高めてもらいたい。そのような価値観のもと、京都のすべての人達が心を一つにして行動し、足りないものは補うような関係作りも大切です。