だが、TBSに限った話ではないが、折からの広告収入の激減が業績の低迷につながっている民放キー局にとっては、将来的に有料放送への展開をにらんだ可能性を検討しなければなければならないし、いつまでもケーブルテレビを格下扱いして2次利用以降の販売先という状態に留めておくというわけにもいかなくなる。

 端的に言えば、今回のJCOMとTBSの協業は、放送局にすれば、ケーブルテレビ側は対価を確保した上で、地上波の番組を宣伝する“場”を提供するようなものなので、煩雑な権利処理などの問題を除けば、必ずしも悪い話ではないのである。

 現時点では、放送業界内にはJCOMに対する感情的な反発もあるが、TBS社内にも「今回のような前代未聞のトライアルが動いた理由は、経営陣の担当分野が変わった直後のタイミングだったことも大きかったのではないか」(幹部)という見方もある。

 問題は、JCOMが第2、第3の事例を生み出せるかにかかっている。今回の“呉越同舟”が既存の放送業界にとって、「試してみる価値がある」と判断できる結果が出せれば、これまでまったく別の道を歩んできた地上波とケーブルテレビが協業を模索する新時代へと一気に進む可能性が高い。

 すでに民放は、広告収入が下がっていることで番組の制作費を大幅にカットしており、その必然として番組の質が落ちている。それが、視聴者の“テレビ離れ”を生むことにつながっていると言われるなかでは、新たな収益源の確保について真剣に考えることを余儀なくされている。このまま悪循環を続けていても“ジリ貧”であり、いっそうテレビ離れが進むことは「火を見るより明らか」(総務省の幹部)だからだ。

 欧米の先行事例は、数年後には日本に入ってくる。今回のTBSの決断は、吉と出るか凶と出るか——。いずれにしろ、大きな一歩を踏み出したという意味で、現在進行中の“メディア大再編”では要注目の動きである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)