・パナマ文書、タックスヘイブンとは何か?
・富裕層はどんな税金対策をしているか?
・世界ではどのような脱税行為が行われているか?

国税最強部門、「資料調査課」(税務署では調査できない困難案件、例えば大口、悪質、海外、宗教事案などを扱う部署)出身であり、タックスヘイブンの実情を描いた最新刊、『税金亡命』の著者でもある佐藤氏が、本連載で実情を語る。

パナマ文書とは?

 各種報道によると、モサック・フォンセカ(パナマの法律事務所)によって業務上作成された文書で、1970年代から総数で1150万件の公的機関、企業及び個人富裕層の情報が書かれている。租税回避に関する文書が含まれているとのこと。法律事務所と顧客との間でやりとりされた、具体的かつ秘密性に富んだもので、本来は一般に公開されることのない文書である。

流出事件が起きる

 パナマ文書は2.6テラバイトに及ぶ膨大な機密文書で、匿名で2015年に南ドイツ新聞社に提供されたが、諸事情により国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に送られて、公にさらされることになった。ICIJに参加できるのは、各国1社から2社程度の報道機関で、日本では朝日新聞社と共同通信社がメンバー(右寄りの報道機関は参加不可のため)となっている。

 政治家や著名人などの情報があるとされ、この流出事件により租税回避などの「犯人探し」が世界中で行われる事になり、パナマ文書流出事件はワールドニュースとなった。

マスコミ報道から読み解けること

 報道には偏向が見受けられ、租税回避ばかりが目立った内容だったと思う。しかしながら、著者も某社からパナマ文書の原文などの提示を受け、租税回避の有無やスキームが目的とするところについてインタビューを受けたが、必ずしもそうではないのでは、というのが実直な感想だ。

 マスコミとしては、為政者や著名人が租税回避(脱税だけでなく合法、脱法的な節税を含む)をしていると報道すれば、媒体が売れるので煽るのは致し方ないとは思うが。

富裕層がタックスヘイブンを使う理由

 確かに、租税回避を目論む輩がいない訳ではないが、パナマ、その他のタックスヘイブンを利用するのには、いくつかの正当な理由がある。このこと抜きにして、租税回避だけがニュース先行するのは、仮に名前が明らかになった企業や個人に対して、不要な誹謗中傷の原因になりかねないので注意が必要である。タックスヘイブンを利用する主な目的は4つあり、順に紹介していく。