【目的1】事業のスピード化

 企業経営は、事業内容の選択・判断だけでなく実行までのスピードが重要である。何かのプロジェクトを立ち上げる場合、タックスヘイブンでの事業展開は、設立から銀行口座の開設、投資環境の条件などから考えると好立地といえる。弁護士や会計士などの専門家などが、第三国の利用を含めたワンストップでサポートできる体制にあるからだ。金融インフラに不安があるタックスヘイブンは少なくないが、他国の金融インフラを利用すれば問題はない。

【目的2】二重課税の回避

 先進国の法人税や所得税は、「全世界所得課税」を採用している。例えば、日本に本店所在地がある企業であれば、日本以外で稼得した所得(全世界所得)にも日本の法人税により申告しなければいけない。

 では、アメリカ支店で稼得した所得はどうなるか?アメリカに所得の源泉(販売施設、工場から売上が発生する場合など)があれば、アメリカで得た所得はアメリカで法人税を払えという事になる。ということは、アメリカ所得分については二重課税になってしまう。

 二重課税を防止するために、外国税額控除(アメリカで納税した分を日本の法人税から控除する)という制度や租税条約を整備しているわけだが、租税条約を結んでいない国などとは、依然として二重課税のリクスが残ることになる。

 そこで利用されるのがタックスヘイブンである。税金がゼロのタックスヘイブンであれば、子会社として事業展開してもリスクヘッジができる。そもそも二重課税になりえないからだ。

 ここで問題となるのが、タックスヘイブン子会社(TH会社)が稼得した所得の扱いである。税金というのは、その国が決める専権事項である。TH会社が税金ゼロでも、日本政府がTH会社に課税することはできない。ただ、手放しで放っておくと、本来は日本の所得になるものをTH会社に利益の付け替えができなくもない。無条件でTH会社の運営を認めると税収が減ることになる。

 そこで、事業実態がないTH会社などについて、タックスヘイブン税制というウルトラCの「武器」を持つことにしたわけだ。一定要件に該当しないTH会社の所得を日本居住者の所得に「プラス」して申告しなければいけない、ということになった。他国の納税者の所得を、日本居住者の所得として申告させるという意味で、ウルトラCといえる。