一見過激なトランプ氏の主張も、
オバマ氏の主張の延長線上にある
オバマ政権が続くあと5ヵ月間、アメリカは事実上、機能しないだろう。
アメリカは、いま、大統領選挙の真っ只中にあり、共和党のドナルド・トランプ氏の主張する「アメリカ第一」主義が広がっている。移民・難民の排斥、同盟諸国による防衛予算の負担増を1つの特徴とする氏の主張は乱暴に聞こえるが、実はオバマ大統領の主張と重なるのである。
オバマ氏の中東への軍事介入の拒否も「アメリカ第一」主義の一例だ。また、氏が大統領に就任した2009(平成21)年には、陸軍大学ウエストポイントで、自分の最も強い関心は国家建設にある、すなわちアメリカをしっかりと建てるということだ、と語っている。
他国のことよりアメリカだというオバマ大統領の主張は、トランプ氏の「アメリカ第一」主義と基本的に変わらない。
他国の争いに軍事介入することはもうしたくないと、多くのアメリカ国民が共和党、民主党の相違を超えて考え始めている。アメリカを主軸とする冷戦後の世界の体制は、ここにきて明白な変化を遂げ、孤立主義にシフトしつつあるのである。
(第2回へ続く)