習近平国家主席はイギリスに訪れた際にも、なぜか「日本の残虐性」に言及した。また、国連議会では「日本には核拡散リスクがある」などと、言われのない非難をしたりもしている。この異常なまでの「日本叩き」の背後には、必死に国内体制を維持しようとする中国共産党の意図が見え隠れしている。人気ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の最新刊『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』の中から紹介していこう。
あらゆる機会に「日本の残虐性」を叫ぶ中国
1995年に『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、1998年には『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。2007年「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。
著書に『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)、『「民意」の嘘』(花田紀凱氏との共著、産経新聞出版)、『日本の未来』(新潮社)など多数。
中国の習近平国家主席は2015年10月20日、イギリス議会に続いて、バッキンガム宮殿で開催された公式晩餐会でも演説した。イギリスのメディアは、白いドレスで正装したエリザベス女王と赤いドレスで装ったキャサリン妃の間に、黒い人民服姿で座る習氏の映像を伝えた。
イギリス議会とバッキンガム宮殿での習氏は2つの演説で、いずれも「日本の残虐性」に言及した。女王陛下主催の華やかな晩餐会で、英中以外ただ1つ、第三国の名、日本の国名を挙げて、「日本軍の残虐性」を語ったのである。何という悪意であろうか。
習演説は1998(平成10)年の江沢民演説と重なる。国賓として来日した江氏は天皇、皇后両陛下主催の晩餐会のみならず、早稲田大学でも、「過去の侵略の歴史をかがみとして、日本人は未来永劫、反省しなければならない」と語った。中国の「対日歴史戦争」はいささかも変質することなく、執拗に続いている。
同じ日に国連総会では、中国の国連大使、傅聡氏が、日本非難を展開した。その内容は、日本が保有する核物質は核弾頭にして1000発以上に相当し、核拡散の観点から深刻なリスクであるというもので、日本の「著名な政治家」が核武装論を展開しており、政策決定がなされれば日本はごく短期間で核武装国になると警告するものだった(「産経新聞」2015年10月22日付)。