誠さんはそんなふうに悲惨な現状を訴えかけてきたので、私はこんな質問を投げかけました。

「彼女のヒステリーに対して、どのように対応したのでしょうか?」

 誠さんいわく、彼女が怒り出すと自分から何も言い返さず、彼女のペースに合わせていたそうです。そして彼女の「おかんむり状態」が収まるのを、ただただ待つだけ。もちろん、彼女の暴言のなかには、誠さんにとって頭にくる内容もかなりあったようですが、とにかくカッとせず、話の腰を折らないよう心掛けたようです。誠さんはなぜ、ここまで寛容な態度に徹したのでしょうか?

「僕も早いもので、今年で三十路。世間的には、もうまさに結婚適齢期。会社の同期はもちろん、後輩もどんどん幸せになっていきますよ。今回の彼女を逃したら、今度はいつ『イイ人』に巡り合えるか。5年後?10年後?だったら、何とかこのチャンスをモノにしたい!そう心に決めていたんです」

 さらに、誠さんは彼女が「運命の人」だと思い込んでいました。

「こんな自分に付いてきてくれるだけで、僕にとっては十分、ありがたかったんです。こうやって女性と同棲するのも、今回が初めてだったので。今思えば、僕はこのとき、結婚、結婚と焦っていたような気がします。ちょっと頭がどうかしていましたね!」と誠さんは当時のことを振り返ると、後悔の念が溢れてきたようで、私の前で苦笑いを繰り返していました。

 トンデモ発言、破天荒な態度、そして攻撃的な性格……誠さんは彼女の一挙手一投足に悩まされてきました。今までは良かれと思い、「大人の対応」を貫いてきたのですが、結果的に誠さんの優しさはむしろ裏目に出たのです。残念ながら、今までにも増して彼女の悪態はエスカレートしていったそうです。同棲を初めてから2ヵ月目のことです。

帰宅すると部屋から罵声が
悪質なクレーム電話をしていた彼女

 誠さんが仕事を終えて足早に家へ帰ってきたところ、玄関先まで聞こえるほど、大音量の罵声を耳にしたそうです。「信じたくはなかったのですが、それは彼女の声でした」

 誠さんは心配するあまり、顔が青ざめたそうですが、誠さんが急いで家のなかに入ると、携帯電話を手にした彼女が「パッケージに『さくさくの食感』と書いてあるのに、これは何なの!全然さくさくしないじゃない!」と、凄い剣幕で激昂していたそうです。電話の先はお菓子メーカーのお客様センターで、彼女はその担当者に向かって怒鳴りつけていたのです。

「そんなバカな。たかが100円のスナック菓子なのに」

 彼女がなぜ怒っているのか、誠さんには全く理解できませんでした。誠さんの感覚では彼女の言い分は悪質なクレームでしかなく、完全に「言いがかり」だと感じざるを得ませんでした。