レベル3以上実現に不可欠な
リアルタイム情報の入った地図開発もスタート

 レベル3以上の自動運転車を実現させるためには、これまで述べた法整備、社会の理解、運転主体のスムーズな引き継ぎに加え、既存技術の革新が求められている。そのひとつが「地図」だ。

 先述した通り、レベル3の自動運転では、自動走行システムが運転の主導権を握る。それを実現するためには、目的地を入力するだけで経路をシステムが決定し、安全に走行するための高精度な3次元地図データが必須となる。

 これに加え、この地図はリアルタイムの工事や事故、信号や渋滞などの道路状況を伝える“動的”な地図、「ダイナミックマップ」でなくてはならない。今年の5月には三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、インクリメント・ピー、トヨタマップマスターの6社と自動車メーカー9社が手を結び、「ダイナミックマップ基盤企画株式会社」が設立された。

 三菱電機など上記の6社は、15年にSIPの「ダイナミックマップ構築に向けた試作・評価に係る調査検討」を受託している。この成果を受け、莫大な費用と手間を要するダイナミックマップの作成や仕様の標準化に向けてさらなるオールジャパンの体制でダイナミックマップ構築に挑む仕組みが整えられた。

「ダイナミックマップは、自動走行システムへの利用はもちろん、将来的には防災や社会インフラの維持管理など、デジタルインフラとして付加価値を生んでいくものと見込まれています」(同)

 ダイナミックマップについては、欧州でもアウディ、BMWとダイムラーが共同で地図会社のヒアを28億ユーロで買収するなど、基盤作りを積極的に進めている。アメリカのグーグルは、言うまでもなくグーグルマップのノウハウをより深化させてくるだろう。地図フォーマットの標準化レースは日米欧の激戦地となっているのだ。

 他にも、センシング技術の低コスト化、車間ネットワークの構築、システム消費電力の削減など、課題は山積みである。1メーカーの「ものづくり」の努力だけではとうてい太刀打ちできないほど、乗り越えるべきハードルは高い。

「今はまだ手探りの状態ですが、目指すべき方向さえ見つかれば、わが国は一丸となって突き進む国民性です。大げさな言い方になるかもしれませんが、『移動とは何か』、さらに言えば『これからの日本をどういう国にするか』という明確なビジョンと、人材を動かす強力なリーダーシップが求められています」

 “最後の国民産業”と称される自動車産業は今、間違いなく大きな変革期を迎えようとしている。猛烈なスピードで追い上げを図る産官学のスクラムが、世界の標準化競争を制することができるか。底力が問われている。