当局からの呼び出しに
疑心暗鬼になった副社長
その日、A商事の副社長X氏は、調査当局からの呼び出しを受けていた。取引先であるY物産の不正取引に協力したとの嫌疑により、A商事に対する調査が始まってから1ヵ月が過ぎようとしている時であった。調査に際しては、A商事の特定人物が使用するパソコンを押収されており、未だに返却されない状況にあった。
「貴殿は今まで、今回の不正協力は担当部長の独断で行ったことであり、経営陣をはじめ会社の組織的な関与はない、と説明してきたはずだ。
しかし当方の調査によれば、実際には貴社取締役のY氏は、担当部長から報告を受け、後日問題が発生しないように、関連する情報の廃棄を担当部長に指示しているではないか。
先日提出された貴社の調査委員会の中間報告書も、経営陣の関与なしとしているようだが、この状況は経営陣による隠蔽とみなされても仕方ない。調査委員会とも協議の上、適切な対応をとるように」
との厳しいコメントとともに、その証拠資料として、関係者のパソコンやA商事のサーバから取り出したという、メール情報や電子情報の一部のプリントアウトを渡された。
X副社長は、当局からの厳しい叱責に大きなショックを受けるとともに、なぜ、当局の調査結果と自社の社内調査の結果が大きく異なるのか、疑心暗鬼に陥ることとなった。
なぜ情報格差が
生じたのか
X副社長は、会社に戻ると、早速、社内調査の責任者A氏を呼び出し、先程の当局からの指摘を伝え、受領した証拠資料の一部を手渡すとともに、当局の指摘の事実確認と社内調査の再実施を命じた。