そしてほどなく、不動産屋さんから「あなたたちになら売ってもいいとのことですよ。ちゃんと農家資格を取り、仮登記の農地部分を本登記するまでは、何でも協力するとのことですよ」と連絡が入ったときの喜びは、今でも忘れられません。
売り主さんの人柄を知り、売ることへの逡巡を知り、ずっとこの土地を守ってきたご先祖代々の愛着の強さを感じる。そんな中、自分たちのこの土地への思いはさらに強まりました。
公図の地目の中の「墳墓」という項目におののいた当初からぐっと心持ちが変わり、「こんな見晴らしのいい高台に家をつくって、この景色を見ながら生活して、土地を荒らさず守ってきた人たちがいるんだな。その人たちががっかりしないように、わたしたちも頑張らなきゃ」と敬虔な気持ちにすらなりました。
買う前に、これだけの責任感と愛着が持てたこと。その後、実際に三芳で週末生活を送る中でさまざまな苦労をしながらも、一度もこの土地から心が離れないで現在に至るのは、この経緯によるところもあるのかもしれません。
こうして、売り主さん、不動産屋さん、地元農家さんの協力があり、他にも農業委員長さんや役所の方々の協力も経て、ようやくわたしたちはこの土地の売買契約へと進むことになりました。ここまで本当に長かった。
そして、これは終わりではなく、はじまりです。
東京と南房総の家を行き来する二地域居住が、ここからようやくスタートしたのです。
(第13回に続く)