平日は都会で働き、週末は田舎で過ごす「二地域居住」という新しい暮らし方。東京生まれ、会社勤め、共働き、こども3人。およそフットワークが軽いとは言えない一家が出合った「運命の土地」が農地だったら、どうするか?農家でなくても農地は買えるのか?今、大きな注目を集める「田舎暮らし」の新しいバイブル『週末は田舎暮らし』から、一部を抜粋して紹介する。
◆これまでのあらすじ◆
夢の田舎暮らしを始めるために、一家は神奈川、千葉の不動産屋をめぐり歩き、ようやく「運命の土地」に出合うことができた。ところが、その矢先、運命の土地にひそむ「農地は買えるのか問題」に苦悩することになる……。
農地を取得するのは、無謀か?
「農地って買えるの?」という、はじめからずっと持っていた疑問と真正面から向き合ったのは、この土地の取得に向けて本腰を入れはじめてからでした。
ちょっと専門的な話になりますが、基本的に「農地」というのは農地法の管理下に置かれる土地であり、「農家同士での売買」しか許されていない(農地法第3条)ため、この土地が欲しければまず「農家」になる必要がある。これが基本です。
農家になるためには、市に営農計画書を提出し、合わせて農業委員会(選挙で選ばれる地域農家の代表で組織される)に実際の5反以上の農地の管理状況を通年確認され、その審査結果として「あんたがたを農家と認めよう」と認められる、というプロセスを要します。そうしない限り、この土地(農地)は自分のものにはならないのです。
農地は固定資産税が安いため、不法に取得してそこを産業廃棄物の投棄場として使うという悪例が後を絶たないらしく、厳正な審査を経て農家資格を取得するというハードルは、土地の悪用を防ぐ意味もあるとのこと。
不動産屋さんに「この家に住めば農家になれますよ」と、さらりと言われた言葉はまったく無効であることに、わたしたちは今さら驚きませんでした。いや、「移住して、ここで真面目に農業をすれば農家になれて、そうすれば農地売買できるようになるんですよ」というプロセスを大きく端折って言っただけかもしれません。ええ、きっと悪気はないんです。
普通に考えれば「そんな条件が付いてくるならこの話はチャラってことで」とあっさり投げ出すのが妥当だと思います。東京での仕事も家も投げ打って南房総にて農家になる、という計画変更は、現実的に無理がありすぎるためです。