当初、さてこの非都市生活的事態をどう捉え、どう表現しようとチラリと考えたことがあります。わたしの言動はおそらく、こどもたちに影響を与えるだろうなと思ったからです。

「寒くて寒くて耐えられない!」「部屋に虫がいるなんて気持ち悪い!」と言ってしまうこともできます。そして、特にそれがわがままで神経質とも思えません。きっと東京の家なら普通に言っていることでしょう。

 だからといって、ガマン大会のように耐え忍ぶのも、妙な精神論を振りかざすようでしっくりきません。「虫に耐えられないのは田舎暮らし失格だ!」だなんて、ちょっとマッチョすぎます。

 そこで、とりあえず、東京の生活と違うことがあったら、その違いを楽しんでみることにしました。

 入居してすぐ、しんしんと冷える2月。朝、暖気のとれるミニマムなシェルターである

 布団からようやく体を抜き、震えながらストーブをつけて、部屋の温度はどんなもんかと見ると「……7度だ」。

 ちょっとちょっと、7度だよ!東京だったら暖房は何度に設定してる? 20度とか22度とかだよね?あれでも冬は寒いのに、7度ってすごくない ママの息、どれくらい白い?家の中なのに、みんな蒸気機関車だわ。見て、今入れたコーヒー一瞬でさめちゃった。なのにこんなに湯気が出てる!

 こどもたちはよくわからないままハァ~、ハァ~と息の白さの競い大会です。

「見て!どれくらい白い?ハァ~」

「わたしは!?ハァ~」

 すごいね、白い息。ひょっとしたら外の方が、お日様が当たってあったかいかもよ?食べ終わったら、外で遊ぼうか!

 すると2人はキランと目を輝かせて「どれくらいあったかいか見てくるー!」と飛び出します。

 ほどなく帰ってきて、「ママー!地面が真っ白!ぜんぶ霜!長靴で踏んでいい?きゃあーーー!」と叫んでタッチ&ゴー。どうせ寒いなら外の方が楽しいわけです。

(第15回に続く)