アスベストを含有するスレート片が散乱する解体現場 Photo by Masayuki Ibe

 監督官の1人は「県の解体業協会がやった事前調査でも、天井板にある鉄骨の吹き付け材すら調べてなかったことがあります。その時は工事を止めて分析させました。事前調査すら不十分な場合がまだ少なくない」とため息をつく。

 市内には、原則ではアスベストが飛散しないように、手ばらしとされるアスベストを含有するスレート板を粉々にし、作業員はアスベストの曝露を防止する防じんマスクの着用や飛散防止の散水もしていない現場も存在した。

 ある監督官は「復興が最優先の状況で、徹底した対策まで踏み込みづらい。そういうジレンマはみんな持っている」と打ち明ける。

無い無い尽くしの日本
繰り返される20年前の悲劇

 熊本県は厚生労働省と環境省が共同で3月に開催した「熊本地震アスベスト対策合同会議」で、震災後に立ち入り検査を強化してきた経験から、スレート板などアスベストを含有する成形板の事前調査や飛散・曝露防止を「課題」として挙げ、「平時におけるアスベスト対策が業者に浸透していないと、災害時での適切な対応が難しくなる」と指摘した。現行の国の規制やその施行状況に対し、現場が「不十分」と声を上げたに等しい。

 にもかかわらず、会合の席で両省からは反応すらなかったという。

 そもそも改修や解体工事でアスベスト建材の事前調査や対策を義務づける労働安全衛生法石綿障害予防規則(石綿則)は2005年7月施行で、すでに12年近くが経過している。それでも、適正な対策が実施されないのはなぜか。