日本放送協会(NHK)が、本来、積み立てから給付すべき退職者の企業年金の一部を、受信料収入から補填して給付していることが、関係者の話で明らかになった。

 関係者によると、その額は2007年度が約100億円、08年度が約120億円に上っているという。

 勤続年数などで企業年金の支給額は異なるが、NHKによれば平均支給額は月12万円程度と民間に比べて高い。つまり、退職者に対する高待遇を維持するため、一部とはいえ「皆様の受信料」を使って尻ぬぐいしているのだ。

 背景には、企業年金の積み立て不足がある。NHKは06年度まで、年金の積み立て必要額を算定するための利率(割引率)を4.5%という高水準で据え置いていた。

 それを07年度になってようやく見直し、市場実勢に合わせて2.5%前後まで引き下げた結果、積み立て不足は一気に前年度の2.4倍、2700億円規模にまでふくらんだのだ。

 それが、わずか1年後の08年度末には約3300億円にまで増加。現在の年金資産は3000億円程度のため、半分程度しか手当てできていないことになり、NHK内部からは、「近い将来、政府管掌の年金に移管せざるをえない状況に追い込まれるのではないか」といった声も漏れてくる。

 こうした状況にNHKでは、今後15年間かけて積み立て不足を解消する方針を掲げて償却を進めている。しかし、とうてい賄い切れるものではなく、受信料収入を充てているというわけだ。

 NHKの経営陣もさすがに焦りを感じたのか、労働組合に対して確定拠出型年金への移行、もしくは確定給付型を維持するならば現役職員に対する給付額の減額に応じるよう提案している。

 これに対し職員は、「なぜOBの優雅な生活のために現役の職員たちがツケを払わされなければならないのか」と不満を爆発させる。

 しかし、最も憤りたいのは視聴者のはず。番組制作に充てるために支払っている受信料が、違うものに使われているからだ。これに対し、NHKは、「年金制度についてさまざまな角度から検討を継続している」としている。

(『週刊ダイヤモンド』NHK問題取材班)

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