公務員試験・昇進試験の受験者必読!
本記事では、元NHKアナウンサーの超人気講師で、毎年多数の公務員試験合格者を輩出する今道琢也氏の新刊『落とされない小論文』から、内容の一部を特別公開。今回は、誰も教えてくれない「資料付き問題」の正しい解答法をお伝えする。(構成:編集部)
ほとんど習うことがない
「グラフ問題」の解き方
公務員試験には、資料やグラフを使った問題が頻繁に出題されます。資料は1つだけの場合もあれば、複数用意されていることもあります。
その資料をどう扱えばよいのか、正しい方法を学んだことはあるでしょうか。
1つの想定問題を元に、資料問題の解答法をお伝えしていきます。
【公務員試験の想定問題】
下記は、○○県民の南海トラフ地震に対する意識を調査したものである。これを分析し、南海トラフ地震対策を進める上での課題を指摘しなさい。
低評価の解答例
南海トラフ地震の危険は差し迫っており、その震源域に近い本県では早急な対策をとることが求められる。しかし、県民の南海トラフ地震に対する意識は必ずしも十分なものではなく、その点を高めていくことが今後の大きな課題となってくる。また、地震に対しての備えも不十分なものと言わざるを得ない。従って、今後行政の啓発活動や防災教育などによって、県民の「自助」の部分をいかに充実させていくかが大きな課題と言える。(以上)
「どのグラフから何を読み取ったのか?」をもれなく書く
低評価の解答例は、グラフの内容を反映していますし、話の筋も通っています。しかし、不十分です。グラフ問題に正しく答えるためには、「どのグラフから、何を読み取ったのか?」がわかるように書きます。全体的な印象を書くのではなく、グラフ一つひとつから読み取ったことは何かを、それぞれ明記しなければいけません。
そのために最も有効なのは、「資料1より、●●ということがわかる」のように、グラフと解答記述の対応関係を明確にする書き方です。これは学術論文で必ず用いられる方法です。小論文でも、ぜひ活用すべき書き方です。
また、低評価の解答例では「意識は必ずしも十分なものではなく」のように、グラフから読み取った数値を、書き手が抽象的な言葉でまとめています。しかし「どの数値を元に解釈したか」を明確にしたほうが、採点者に思考過程がはっきり伝わります。
そこで、(1)どのグラフの、(2)どの数値を元にして、(3)どんな解釈をしたか。この3つをすべて書いてください。
原則として「すべてのグラフ」に触れること
資料を提示しているということは、「そこから何かを読み取って欲しい」という出題者の意図があるわけです。ですから、原則として、すべてのグラフに触れて解答してください。冒頭の問題であれば、資料1だけにしか触れていない解答は、大きな減点対象になります。
もし、あまりにもグラフや資料の数が多すぎる場合は、すべての資料に触れることは現実的でないでしょう。その場合、「どのグラフを選ぶか?」にも出題者の意図があると考えられますから、いくつかのグラフに絞って解答しても問題ありません。しかし、それはあくまで例外的な話です。基本的には、すべての資料に言及することを原則として考えておいてください。
また、字数に余裕がない場合は、関連する複数の資料をまとめて言及する、という方法もあります。たとえば資料1、2は関連性が高いので、まとめて次のように書くことも可能です。
グラフから何を読み取るか?
いくつかのアプローチ法
グラフ問題でもう1つ大事なことは、「提示された資料から何を読み取るか?」ということです。
円グラフや棒グラフでは、まず数値の大きな部分に着目します。
折れ線グラフでは、数値が急に伸びているところや下がっているところ、あるいは全体が上昇傾向か下降傾向かなどに着目するのが定石です。
これに加え、他のグラフとの関連や出題の意図なども、考慮する必要があります。
冒頭の出題を例にとると、資料1では「聞いたことがある」が圧倒的な割合になっているので、この点に着目して答えます。資料2では「あまり知らない」「ほとんど知らない」を分けることにそれほど意味はないので、「あまり知らない・ほとんど知らない」を一括して捉えます。
資料1の分析と合わせると、「地震の名前は知っているが、詳しいことは知らない人が多い」という問題点が浮き彫りになります。
次に、資料3はどうでしょうか。
まず、「防災袋の準備は他と比べて数値が高いので、2位以下の水や食料の用意、避難経路・場所の確認が、これから力を入れるべきことだ」という捉え方もあります。
ただし、「南海トラフ地震対策を進める上での課題」という問題の趣旨からするとどうでしょう。むしろ、7割が地震の名前を知っているのに、その詳しい情報は知らず、結果として一番割合が高い「防災袋の準備」でも半数に届いていない、と捉えたほうが、課題がさらに浮き彫りになってきます。
「数値が一番高いからこれは大丈夫」ではなく、「一番高いのにこれくらいしかない」という捉え方をするわけです。
このように、1つの資料単独ではなく、他の資料との関連や、出題の意図なども合わせながら考えていくのです。
以上を踏まえた高評価の解答例が、下記です。
高評価の解答例
資料1より、7割以上の県民が南海トラフ地震という言葉を聞いたことがあると回答しており、地震の名称はかなり浸透していることわかる。しかし、資料2より、地震の発生確率や被害の予想については「あまり知らない・ほとんど知らない」と答えた人が6割を超え、その危険性は十分認知されていない。また、資料3より、地震に対しての備えについては、最も多かった「防災袋」でも半数以下で、「何もしていない」も25%近い。地震の具体的な危険性についての理解や、取るべき備えが不十分なことが明らかであり、今後これらの啓発が大きな課題と言える。(以上)
『落とされない小論文』では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。