公務員試験・昇進試験の受験者必読。

本連載では、元NHKアナウンサーの超人気講師で、毎年多数の公務員試験合格者を輩出する今道琢也氏の新刊『落とされない小論文』から、内容の一部を特別掲載する。本番直前からでも、独力で合格水準まで到達するスキルと考え方をお伝えしていく。

ベストセラーとなったAI vs. 教科書が読めない子どもたち(東洋経済新報社)では、日本人の「読解力低下」が指摘されている。それを如実に示すような事実が、小論文受験の現場においても示されている。つまり「問題文の意味を理解しないまま解答して不合格になる」例が後を絶たないのだ。本記事では、その原因と解決策を伝えていく。(構成:編集部)

「問題文の指示に答えていない」
という致命的なミス

小論文試験が始まって真っ先にやるべきことは、「問題をよく読んで、何が問われているかをしっかり理解する」ということです。

「そんなことは言われなくてもわかっている」と思うかもしれません。しかし、それができていない人が非常に多いのです。私が指導する受講生の、実に50%以上が、問題文の指示に正しく答えられていないのです。

このミスは、多くの受験者がもっともやりがちであるだけでなく、一番大きな減点対象となる致命的なミスです。すべての小論文受験者が確実に克服しておくべき、もっとも重要な事項です。

「低評価の解答例」と「高評価の解答例」を比較するBefore→After形式で、このミスが起きる理由と、その解決策を考えていきます。

【公務員試験の想定問題】
○○市の活性化のため、他の都市圏からの移住者を増やすことに、どう取り組んでいくべきか。

低評価の解答例

 ○○市において、他の地域からの移住者を増やしていくことは大変重要な課題である。近年は少子高齢化の進展とともに人口の減少が大きな問題となっている。特に若い世代が進学や就職で市外へ転出することが多く、地域によっては住民の大部分が高齢者となり、集落の維持が困難になっている。
 そこで今後は、他の都市からの移住者を増やすことに積極的に取り組むべきだ。特に近年はスローライフやワークライフバランスといったことが盛んに言われるようになった。地方での暮らしをしたい、良い環境で子どもをのびのび育てたいと考える人は少なくない。大都市圏に住む人にとって、○○市の自然豊かな環境や充実した住環境は、大きな魅力となるはずだ。また、都市部から地方への移住者を増やすことは、大都市圏への人口集中を緩和することにも繋がる。国全体の人口のバランスを考える上でも、移住者を増やすことは大いにメリットがある。
 このような観点から○○市としても市の魅力を全国にPRして移住者を増やし、活力のある街を目指していくべきである。(以上)

高評価の解答例

 ○○市では若い世代が進学や就職で市外へ転出することが多く、地域によっては住民の大部分が高齢者となり、集落の維持が困難になっている。今後、都市部からの移住者を増やし街の活性化につなげていくことは重要で、そのために、次のようなことに取り組むべきだ。
 まず、移住しやすい環境を作ることである。地方に移住しようとする際に不安になるのが、住居や仕事が見つかるかどうかという問題だ。市内では人口減少の中、空き家も目立ってきている。良質な空き家を行政が借り上げ、移住者向けに安く貸し出す仕組みを作ったり、公営住宅の空き部屋を安く貸し出したりしていくべきだ。またハローワークと連携して求人情報を提供する、あるいは創業希望者向けの助成金制度を作るなど、就業面でのサポートも充実させていく必要がある。
  移住希望者に向けての積極的なPRも欠かせない。そのために、県内の他の自治体と協力して大都市で移住希望者向けの相談会を開催していくべきだ。また、常に情報が得られるように、市のサイトに移住希望者向けの特設ページを開設して、移住者向けの支援制度の紹介や生活環境などを発信しておくとよい。
 ○○市が将来にわたって活力を保つために、移住者を増やしていくことは重要な課題だ。市としてこうした施策に積極的に取り組んでいくべきである。(以上)

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さて、あなたは「低評価の解答例」がなぜ低評価なのか、説明できますか?

受験生の50%以上が「問題の意味を理解していない」という大問題「そもそも、何を書くべきか?」を必ず確認しましょう