『書籍づくりの匠』では、本作りに携わるさまざまなプロフェッショナルの方がたに、ご自身のお仕事を語っていただきます。

前回、「ドラッカー名著集」のデザイン誕生秘話について語ってくれた、デザイナー竹内雄二さん。後編の今回は、数多くのベスト&ロングセラーを生み出した今も自信がないという衝撃の告白から始まります。(前回の記事はこちら

「実は、いまでも自信がないんです」

 独立して20年、それなりにデザイナーとして仕事をさせてもらっていますが、いまだに自信満々なんてことありません(笑)。ラフ案を編集者に出して、どういう反応があるか、いまでもドキドキものです。

 もともと、自分に自信があってこの仕事についたわけでもないんです。美大に行ったのも、学問に興味を持てなかったので、座学中心じゃない大学がいいなという消極的な理由からでした。大学でも、3年次から、立体のデザインと平面のデザインとに専攻が分かれるんですが、立体的なもののほうが総合的なセンスや力量を求められそうに思い、これまた消極的な理由(笑)で平面のデザインを選考しました。

 ですから小さなときからこういう仕事をしたいと思って今に至ったわけではないんです。ただ、本を読むのは好きだったので、結果的にはとても楽しい仕事をさせてもらっています。

 いまでは多くの編集者から仕事の引き合いがあり、現在は、30社くらいの出版社と仕事を行っている竹内氏でも、ラフ案を見せる瞬間は不安に思うこともあるという。意外な本音だった。そんな氏にとって、やりがいのある仕事、印象に残った仕事とはどういうものなのだろう。

編集者や著者の先に、読者がいる竹内雄二氏。デスクに並べられた書籍は、すべて竹内氏の手になるもの。ここに並んでいる数の倍はあったのだが、すべて並べることはできなかった。